収穫直後から高糖度で粘質の良食味サツマイモ新品種「あまはづき」

要約

「あまはづき」は、収穫直後から肉質が粘質で糖度が高い、多収の良食味サツマイモ品種である。サツマイモネコブセンチュウに"強"、つる割病および黒斑病に"やや強"の複合病虫害抵抗性である。

  • キーワード:サツマイモ、高糖度、粘質、良食味、複合病虫害抵抗性
  • 担当:中日本農業研究センター・温暖地野菜研究領域・栽培管理グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年の焼きいもの人気の高まりにより、粘質で高糖度のサツマイモの需要が増加している。2007年に育成された肉質が粘質で高糖度の青果用サツマイモ品種「べにはるか」は、需要を支える品種として普及が進んでいる。しかし、収穫直後の「べにはるか」は甘味が少なく肉質が粉質であり、消費者ニーズの高い粘質で高糖度のサツマイモとして出荷するためは、収穫後に一定期間貯蔵しでん粉の糖化を促す等の対策が必要である。そこで、収穫後の貯蔵による糖化促進が不要で早期の出荷が可能な、良食味サツマイモ新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「あまはづき」(旧系統名:関東144号)は、早期肥大性でごく多収の「からゆたか」を母、早掘栽培でも多収の「谷05100‐172」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
  • 「あまはづき」は、収穫後の貯蔵期間なしで、蒸しいもの肉質が粘質になる(図1B)。
  • 蒸しいも品質について、「あまはづき」の肉質は"粘"で食味に優れ、糖度は「べにはるか」よりも高い(表1)。蒸しいもの肉色は、「あまはづき」は"黄"で、「べにはるか」の"淡黄"より濃い(図1、表1)。
  • 「あはまづき」は、低温糊化性でん粉を含み、でん粉の糊化温度は「べにはるか」よりも低い(表1)。
  • 「あまはづき」の育成地における収量は、早掘栽培では「べにはるか」と同程度、標準栽培では「べにはるか」より1割程度多い(表2)。
  • 「あまはづき」は、サツマイモネコブセンチュウに"強"、つる割病、黒斑病に"やや強"、立枯病に"中"の複合病虫害抵抗性である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 「あまはづき」はいもの貯蔵性が"難"であることから、収穫・調整時には丁寧にいもを扱い、貯蔵中の低温や乾燥を避ける。

具体的データ

図1 「あまはづき」の塊根と蒸しいもの断面,表1 「あまはづき」の品質特性(育成地、2015~2020年の平均),表2 「あまはづき」の収量性(育成地、2015~2020年の平均),表3 「あまはづき」の病虫害抵抗性等の特性(育成地、2015~2020年の平均)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2021年度
  • 研究担当者:西中未央、田口和憲、藏之内利和、片山健二、高田明子、藤田敏郎、中村善行
  • 発表論文等:藏之内ら「あまはづき」品種登録出願公表第35402号(2021年8月5日)