冷涼な地域でも栽培できる多収で良食味のサツマイモ新品種「ゆきこまち」

要約

「ゆきこまち」は、多収で良食味であり、複合病虫害抵抗性のサツマイモ品種である。冷涼な地域である北海道での栽培においても多収である。サツマイモ産地の北上と安定生産への貢献が期待される。

  • キーワード:サツマイモ、複合病虫害抵抗性、多収、冷涼地
  • 担当:中日本農業研究センター・温暖地野菜研究領域・栽培管理グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年の焼きいもブーム等による需要増加により、青果用サツマイモの供給不足が続いている。青果用サツマイモは収益性の高い作物であることから、従来はサツマイモ栽培に不適とされていた関東以北の地域においても作付けへの意欲が高まっている。しかし、既存の品種を冷涼地で栽培すると、いもの形状の乱れや肉質の粘質化が問題となる。多収でかつ冷涼地での栽培に適した品種があれば、既存産地の生産性向上に加え、新たなサツマイモ産地形成への貢献が期待される。そこで、収量性に優れ、冷涼な地域でもいもの形状や肥大性に優れ食味が良好な粉質系の品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ゆきこまち」(旧系統名:関東155号)は、良食味で病虫害抵抗性に優れる「関東124号(ひめあやか)」を母、草姿がやや立ち型で蒸切干加工用の「関東134号」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
  • 「ゆきこまち」の育成地における収量は、早掘栽培では「ベニアズマ」より5割程度、標準栽培では「ベニアズマ」より3割程度多収である(表1)。
  • 「ゆきこまち」は、冷涼な地域である北海道においても「ベニアズマ」より3割程度多収である(表1)。販売規格に適合したA品の収量についても、「ゆきこまち」は341kg/aで「ベニアズマ」の105kg/aよりも多い。
  • 「ゆきこまち」の塊根の皮色は"赤紫"、肉色は"淡黄"で「高系14号」と同程度であり、「ベニアズマ」の"紫赤"および"黄"よりも淡い(図1)。
  • 「ゆきこまち」の蒸しいもの食味や糖度は「ベニアズマ」並であり、肉質は"やや粉質"、肉色は"淡黄"で、黒変度は「ベニアズマ」よりも小さい(表2)。
  • 「ゆきこまち」は、つる割病および黒斑病には"やや強"、サツマイモネコブセンチュウおよび立枯病には"中"の複合病虫害抵抗性である(表3)。
  • 「ゆきこまち」の貯蔵性は"易~やや易"であり「ベニアズマ」より優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • つるの伸長が早いため、苗が伸びすぎないよう苗床の温度等の管理に注意する。

具体的データ

表1 「ゆきこまち」の収量性(育成地2018~2020年の平均、北海道2018~2019年の平均),図1 「ゆきこまち」の塊根,表2 「ゆきこまち」の蒸しいも品質特性(育成地2018~2020年の平均),表3 「ゆきこまち」の病虫害抵抗性等の特性(育成地2018~2020年の平均)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2021年度
  • 研究担当者:西中未央、田口和憲、藏之内利和、片山健二、高田明子、藤田敏郎
  • 発表論文等:藏之内ら「ゆきこまち」品種登録出願公表第35403号(2021年11月24日)