水稲新品種 「つきあかり」は北陸地域で倒伏させずに750g m-2の多収を達成できる

要約

水稲新品種 「つきあかり」 の北陸地域における収量限界は750 g m-2程度であり、収量や籾数などの収量構成要素、玄米品質や倒伏関連形質との密接な相互関係より成熟期の諸形質の理論値を算出できる。「つきあかり」は多収と良食味・耐倒伏性の両立が可能な品種特性を有する。

  • キーワード:玄米品質、水稲、耐倒伏性、多収、つきあかり、北陸地域
  • 担当:中日本農業研究センター・水田利用研究領域・作物生産システムグループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北陸地域において早生で多収・極良食味を示す水稲新品種「つきあかり」ではこれまでに収量630-660 g m-2の際の収量構成要素が提示されているが(農研機構SOP20-021)、収量限界や多収・良食味・耐倒伏性の両立を可能にする諸形質の総合的な評価はなされていない。本研究では北陸地域の多地点・複数年における施肥試験を通じて、水稲品種「つきあかり」の収量限界やその際の収量構成要素・地上部窒素吸収量・玄米品質・耐倒伏性との相互関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 2017~2019 年に新潟県(上越地域と下越地域)と石川県の計47 区で得られた精玄米重(収量)と単位面積当たり籾数との関係から北陸地域での「つきあかり」の収量限界を750 g m-2 と定め、その際の単位面積当たり籾数は35.7千粒である(図1)。
  • 「つきあかり」の単位面積当たり籾数と玄米タンパク質含有率との密接な正の相関関係より推定できる籾数が35.7千粒のときの玄米タンパク質含有率は7.1%であり、「つきあかり」は多収と良食味の両立が可能な品種である(図2)。
  • その他の収量構成要素や地上部窒素吸収量、玄米外観品質や倒伏に関連する諸形質に関しても、精玄米重や単位面積当たり籾数と密接な関係にあり(データ省略)、精玄米重750 g m-2の際の諸形質の理論値を表1のように提示できる。
  • 精玄米重750 g m-2の際の倒伏スコアの理論値は2.2であり、これは稲体が最大40°強傾いた状態を表すため、多収条件でもコンバインでの収穫作業の支障にならない。

成果の活用面・留意点

  • 本研究は北陸地域での「つきあかり」の高位安定生産に役立ち、750 g m-2 程度の多収は表1の諸形質の理論値に多少の幅を持ちながら達成できる。
  • 本研究で追肥は出穂前14 日前までに施用している。
  • 「つきあかり」において多収で高い品質を持つコメを生産するためには、穂数を十分に確保しつつ籾数を制御し、倒伏を回避できる稈長に制御する栽培管理が特に重要である。
  • 本研究は普及の中心地である北陸地域での調査結果に基づいている。現在「つきあかり」は青森県から広島県までの広範な地域で産地品種銘柄となっており、生育中の気象が異なる条件での収量限界や諸形質の理論値については個別の検討が必要である。
  • 本研究の結果は今後、多収・良食味品種「つきあかり」標準作業手順書(SOP20-021)に反映される。

具体的データ

図1 「つきあかり」の精玄米重と単位面積あたり籾数との関係,図2 「つきあかり」の単位面積あたり籾数と玄米タンパク質含有率との関係,表1 「つきあかり」 において精玄米重750 g m-2を得るための諸形質の理論値

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:石丸努、大平陽一、大角壮弘、古畑昌已、大川泰一郎(東京農工大)、吉永悟志
  • 発表論文等:石丸ら(2022)日作紀、91: 49-58