スターチシンターゼⅢa遺伝子型による高β-グルカン大麦の選抜とその留意点
要約
高β-アミロース遺伝子amo1は、強連鎖するssⅢa変異型選抜マーカーにより選抜できる。ssⅢa変異型ではβ-グルカン含量が平均約3.6%高くなる効果がみられる一方、硝子率が約7.5%高く、千粒重が約1.5g減少する品質低下作用がある。
- キーワード:オオムギ、β-グルカン、amo1、ssⅢa、DNAマーカー
- 担当:中日本農業研究センター・水田利用研究領域・作物開発グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
もち性大麦「フクミファイバー」の高β-グルカン性を司るamo1変異の活用が、機能性成分β-グルカン含量を高めた品種の育成において有用である。高β-グルカン大麦の効率的な選抜法を開発するために、高アミロース遺伝子amo1に強連鎖するスターチシンターゼⅢa (ssⅢa)変異を識別するDNAマーカーを開発するとともに、amo1遺伝子の品質に対する多面的作用を明らかにし、育種利用上の留意点を明らかにする。
成果の内容・特徴
- amo1遺伝子の極近傍領域に存在するssⅢa変異アリルはdCAPSマーカー「dCAPS-SSⅢa-ApaLI」で判別できる(図1、図2)。
- amo1遺伝子を持つ「四R系3755」を交配親とする後代系統群2組合せにおいて、「dCAPS-SSⅢa-ApaLI」マーカーによるssⅢaマーカー型と穀粒品質形質(β-グルカン含量、SKCS穀粒硬度、硝子率、千粒重および空洞粒率)を比較すると、ssⅢa変異型では、β-グルカン含量は平均3.6%高く、本マーカーによって高β-グルカン選抜が可能である(図3)。
- ただし、ssⅢa変異型では硝子率が平均7.5ポイント高く、SKCS穀粒硬度は平均約23.0ポイント高く、千粒重は平均約1.5g減少するなど、硬質化と小粒化の品質低下作用が認められる(図3)。なお、空洞粒率には有意差は認められない(データ略)。
成果の活用面・留意点
- 「dCAPS-SSⅢa-Apa LI」マーカーにより、高β-グルカン遺伝子amo1に強連鎖するssⅢa変異型を選抜できる。
- ssⅢa変異を利用したamo1間接選抜によって、β-グルカン含量を高めた品種育成が可能になる。
- 高β-グルカンとなるssⅢa変異型では硝子率が高まり、小粒化するなど精麦用大麦の品質を低下させる多面的な発現効果がみられるため、実際の育種においてはこの点に留意した交配組合せや選抜が必要である。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、農林水産省委託プロ(<作物育種プロジェクト>民間事業者等の種苗開発を支える「スマート育種システム」の開発、育種ビッグデータの整備および情報解析技術を活用した高度育種システムの開発)
- 研究期間:2017~2021年度
- 研究担当者:青木秀之、関昌子、中田克、中野友貴、長嶺敬
- 発表論文等:青木ら(2021)育種学研究、23:8-15