要約
「ひめあずま」は、関東地域の主力品種「ベニアズマ」に似た風味と食感を持ち、菓子等への加工適性も優れているため、青果用と菓子加工用の両方に適する。また、いもの外観や形状のそろいが良く、貯蔵性も優れており、病害虫への複合抵抗性を有する。
- キーワード : サツマイモ、複合病害虫抵抗性、青果用、菓子、加工適性
- 担当 : 中日本農業研究センター・温暖地野菜研究領域・栽培管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
1984年に育成された「ベニアズマ」は関東地域の主力品種として長年にわたり親しまれており、ホクホクした素朴な甘さの焼きいもにも根強い人気があり、その肉質がいもようかんや大学いもといった菓子加工に適している。しかし、近年は、「ベニアズマ」よりも生産しやすく、収益が得られやすい品種への作付け意欲が旺盛であるため、「ベニアズマ」の作付面積が減少し、市場から「ベニアズマ」の数量確保が難しくなりつつあるとの声があがっている。
そこで、「ベニアズマ」の生産上の欠点であるいもの外観、形状そろいの問題を克服し、病害虫抵抗性と貯蔵性を大幅に改良するとともに、菓子類への加工適性が高い品種開発を進めることにより、「ベニアズマ」の後継になりうる青果用と菓子加工用の両方に適した良食味新品種を開発する。
成果の内容・特徴
- 「ひめあずま」(旧系統名:関東154号)は、病害虫抵抗性に優れる「作系25」を母、やや粉質の肉質で食味に優れる「すずほっくり」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
- 「ひめあずま」の塊根は、「ベニアズマ」の欠点であった条溝や凹凸がほとんど発生せず、形状そろいが良い(図1)。
- 「ひめあずま」の蒸しいもの肉色は"黄"、肉質は"やや粉"、食味は"やや上"である(表1)。
- 「ひめあずま」の収量は「ベニアズマ」並である。株あたりのいも数が多く、上いも1個重は小さい(表2)。
- 「ひめあずま」は、黒斑病は"中"~"やや強"、サツマイモネコブセンチュウ、つる割病および立枯病への抵抗性がいずれも"やや強"の複合病害虫抵抗性であり、いもの貯蔵性は"易"で優れる(表2)。
- 「ひめあずま」は、いもようかんならびに大学いもへの加工適性が主要品種と同等に優れる(図2)。
普及のための参考情報
- 普及対象 : サツマイモ生産者、サツマイモ加工事業者、普及指導機関。
- 普及予定地域・普及予定面積 : 2027年頃までに関東地域を中心に150ha。
- 基腐病抵抗性は単年度の相対評価が"やや弱"であるため、本病の発生地域に作付けする場合は防除対策を徹底する(表2)。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2014~2022年度
- 研究担当者 : 田口和憲、西中未央、藏之内利和、片山健二、高田明子
- 発表論文等 :
- 田口ら「ひめあずま」品種登録出願公表第36149号(2022年7月26日)
- 田口(2023)いも類振興情報 154:2-5