土のうトラップを用いたマメシンクイガ越冬幼虫の地表面への移動・再営繭時期の調査法

要約

マメシンクイガ越冬幼虫の地表面への移動・再営繭時期は、越冬幼虫が生息する土壌の上に、目合の異なる上下の網を組み合わせた土のう状のトラップを設置して、6月末から継続的に捕獲調査することで把握できる。

  • キーワード : 土繭、土壌水分、土のうトラップ、夏休眠
  • 担当 : 中日本農業研究センター・水田利用研究領域・作物生産システムグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

マメシンクイガは、比較的冷涼な地域で発生が多いダイズ害虫である。防除適期は成虫発生期頃にあり、効果的な防除のためには発生時期の予測が重要である。本種は、土壌中の丈夫な土繭内で幼虫で越冬するが、翌春からしばらくは発育が停滞する夏休眠状態となる。その後、蛹化のために地表面に移動して再営繭する。再営繭時期と臨界日長により蛹化時期が決まるため、地域個体群ごとにある特定の時期(上越市では8月下旬~9月上旬)に揃って羽化するものの、年次変動は認められる。この変動の予測には、地表面への移動時期の把握が必要であるが、これまで十分に分かっておらず、調査法もない。そこで、地表面への移動・再営繭時期の調査法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 地表面への移動・再営繭時期の調査では、土のうトラップ(図1)を地表面に設置する。設置後1週間で回収し、トラップ内を調査して再設置する。地中から地表面への移動幼虫は、底面の網と上面の網との間で再営繭するので捕獲できる。四角形の土のうトラップは、本種の発生圃場があれば、すぐに調査開始できる利点がある。一方、円形の土のうトラップは、ワグネルポットに土壌をつめ、前年捕獲した土繭を4cmの深さに埋め、その上に置いて調査する。事前準備が必要だが、圃場調査より安定した結果が得られる利点がある。
  • 土のうトラップを用いた調査は、夏休眠の覚醒が誘起される臨界日長(14~15時間)の数週前から行うとよい。上越市では6月末ごろである。幼虫の地表面への移動は、4~6月は少なく(図2)、7月中旬から8月上旬にピークとなっている(図2)。また、7月以降の夏休眠の状態にある土中の幼虫は、ゆっくりと発育を続ける状態に揃っている(図3)。
  • 通常は、地表面への移動の後に臨界日長に達する日を迎える(図2)ことで、羽化が斉一化する。しかし、2019年のように地表面への移動盛期頃に土壌が高温または低土壌水分条件となった場合は、臨界日長に達する日より後に地表面への移動する個体が増加し(図2)、羽化時期が遅延する可能性が高まる。

成果の活用面・留意点

  • 本種越冬幼虫の地表面への移動・再営繭時期を地域個体群ごとに明らかにできる。これは、成虫発生時期の変動の予測法を開発する上で有用である。
  • 臨界日長は地域個体群によって異なる。

具体的データ

図1  土のうトラップの設置状況,図2  地表面に移動した幼虫の捕獲消長,図3  土嚢トラップで捕獲した幼虫を室内飼育した場合の飼育開始から羽化までの日数

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2016~2020年度
  • 研究担当者 : 竹内博昭、遠藤信幸、渋谷和樹
  • 発表論文等 : 竹内ら (2022) 北陸病虫研報 71: 1-8