水稲の圃場試験で適度な気温上昇が可能で簡易に設置できるPunched-topチャンバー

要約

Punched-topチャンバーは、水稲の登熟期に圃場に設置して高温登熟性評価を行うための処理器である。穴の開いた塩ビフィルムを天井部に用いることで、稲周辺の過剰高温を回避でき、既存の方法より適度に気温上昇が可能である。また、ビニルハウスより飽差やCO2濃度の低下を軽減できる。

  • キーワード : 水稲、圃場試験、Punched-topチャンバー、高温登熟性評価
  • 担当 : 中日本農業研究センター・転換畑研究領域・畑輪作システムグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

地球温暖化は作物生産に様々な影響を及ぼすことが懸念されており、水稲の登熟期の高温による外観品質の低下や粒重の減少が問題となっている。こうした高温の影響評価や耐性品種の選抜のために、圃場に簡便に設置でき、適度に温度上昇させることのできる処理法が有用である。水田圃場で低コストかつ簡便に設置可能な高温処理として、オープントップチャンバー(OTC)やビニルハウス(SCC)がある。しかし、既報では、OTCの日中の気温上昇効果は1°C程度と十分ではない。また、SCCは半閉鎖系のために気温上昇効果が大きいが、不稔や死米の発生を助長する40°Cを超す高温が観察され、湿度の上昇やハウス内の結露、CO2濃度の低下等の気温以外の気象変化が生じる問題がある。
そこで、チャンバー内の微気象条件がOTCとSCCの中間的になることを期待し、OTCの天井部に一定密度の穴を空けたPunched-topチャンバー(PTC)を考案し、高温処理手法としての有効性を比較評価する。

成果の内容・特徴

  • PTCは、1.8m四方の枠組みの周囲に農業用ビニルを巻き、10×20cmの密度で直径3 cmの穴を開けた塩ビフィルム(厚さ0.1 mm)を天井部に設置する(図1)。チャンバーの高さは1.3 mとして側面下部を35 cm開ける。
  • PTC内の気温上昇効果は日射量に比例して高まり、風速が小さいほど大きくなる(図2)。高温で風速の大きいフェーンが吹く条件では、PTC内の気温は外気より低くなる。
  • 200 W m-2 以上の高日射条件でのPTC内の気温上昇は3.7°Cで、SCCの5.3°Cより小さいが(図3)、OTCで報告される1°C程度よりも大きく、PTCは適度な気温上昇が可能である。また200 W m-2 未満の低日射条件での気温上昇はSCC,PTCとも0.7-0.9°Cと小さいが、穂温の上昇は1.7-1.9°Cと気温以上に高まると推定される。
  • 200 W m-2 以上の高日射条件で、SCCでは20.6 %の頻度で38°C以上の過剰高温が認められるが、PTCでは2.5 %まで大幅に軽減され(表1)、SCCよりも安全に高温登熟性を評価できる。高日射条件では、チャンバー内の飽差は外気と同等であるが、低日射条件では、外気と比較して飽差が有意に低下し、蒸散がいくらか抑制される可能性がある(表1)。また、チャンバー内のCO2濃度の低下は、SCCよりも小さく、外気条件に近い。

成果の活用面・留意点

  • 水稲等の作物栽培試験や育種選抜において群落の高温処理器として利用できる。
  • 作物の上端がチャンバーに接しないよう、チャンバーの高さを調整する。
  • 側面の開放高の高さや天井部の穴の密度や直径を変えることで、温度上昇効果を調整できる。
  • 強風時にはチャンバーに物理的被害が生じる懸念があり、フィルムを一時的にはがす等の対策を行う。
  • 気温の上昇効果は日射量に依存するため、地域や処理時期により効果の程度が変動する可能性がある。また、夜間の気温の上昇効果はない。

具体的データ

図1 Punched-topチャンバーの模式図,図2 日中の気温上昇効果(「Punched-topチャンバー内」-「外気」)と日射量との関係,図3 外気、およびビニルハウス(SCC)、Punched-topチャンバー(PTC)内で観測された気温とIM2PACTモデル(Yoshimotoら、2011)で推定した穂温,表1 日中の外気、およびビニルハウス(SCC)、Punched-topチャンバー(PTC)内での過剰高温となる頻度、ならびに飽差とCO2濃度

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産分野における気候変動対応のための研究開発:温暖化の進行に適応する生産安定技術の開発)
  • 研究期間 : 2017~2018年度
  • 研究担当者 : 大角壮弘、平内央紀、岡村昌樹、吉本真由美
  • 発表論文等 : Ohsumi A. et al. (2022) Plant Prod Sci、25:280-288