関東地域における大豆有機栽培技術体系

要約

関東地域での大豆有機栽培では、有機栽培に適した品種の選択(中~晩生、小~中粒)、播種時期の変更(通常より遅くする)、早期に中耕培土を行うことにより、吸汁虫害や雑草害を低減することが可能で、慣行栽培の7割程度の収量を見込むことができる。

  • キーワード : 大豆、有機栽培、品種、播種時期、早期中耕培土
  • 担当 : 中日本農業研究センター・温暖地野菜研究領域・有機・環境保全型栽培グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 過年度普及成果情報(2015年度)

背景・ねらい

有機大豆は需要が高いにもかかわらず、国内での生産量が不足している。大豆は慣行栽培でも播種や防除の適期作業が求められるが、有機栽培では化学合成された農薬を使用せずに雑草や病害虫等へ対応することが必要となり、それらへの対応と基本の栽培技術を組み合わせた栽培体系の確立が求められている。このため、有機栽培における雑草・病害虫防除等の技術を確立するとともに、それらを体系化して取りまとめ、国産有機大豆の増産に資する。

成果の内容・特徴

  • 大豆有機栽培のための技術と一般的な大豆栽培技術とを組み合わせ、ほ場準備から収穫に至るまでを体系化している(図1)。
  • 有機栽培には虫害回避に有利な中~晩生で小~中粒・多莢の品種が適する。早生品種は避け、晩播適応性の高い中生~晩生品種を利用することが好ましく、関東地域では、「納豆小粒」「フクユタカ」や、関東各地の晩播適性の高い在来品種等が適している(図2)。
  • 関東地域の慣行栽培では6月上~下旬の播種が一般的だが、有機栽培では安定した収量が得られる7月上~中旬の晩播が適している(図3)。播種を遅くすることで開花期が遅くなり、カメムシ等吸汁害虫の被害を低減することが期待できる。
  • 有機栽培では除草剤を使用できないので、大豆本葉1枚目が展開する頃(大豆播種10~14日後)を目安に中耕培土する(「早期中耕培土」)ことにより、開花期頃の雑草量を大幅に低減できる(図4)。なお、慣行栽培では、土壌処理型除草剤の効果が消失する時期(播種後3~4週間後)に1回目の中耕培土を行うことが一般的であり、慣行より早期に中耕を行う。
  • 上記の栽培技術を組み合わせることにより、慣行栽培の7割程度の収量を見込むことができる(図2、3)。

普及のための参考情報

  • 本成果情報の内容は標準作業手順書として詳しく取りまとめている。
  • 普及対象 : 現在および今後大豆有機栽培に取り組む生産者、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 関東地域・500ha。
  • その他 : 本成果は関東地域の平野部で行われた試験結果であり、地域によっては導入の際に検討が必要である。

具体的データ

図1 大豆有機栽培体系の概要,図2 品種の早晩性と有機栽培での収量(2008-2010),図3 播種日と収量,図4 有機栽培での早期中耕培土による残存雑草量の比較

その他