子実トウモロコシのアワノメイガ被害の抑制にはジアミド系殺虫剤の効果が高い

要約

飼料用トウモロコシ(子実)のアワノメイガに適用拡大されたジアミド系殺虫剤は、既存の殺虫剤であるカルタップ水溶剤およびBT水和剤と比較して本種に対する被害抑制効果が高い。

  • キーワード : 飼料用トウモロコシ、子実トウモロコシ、アワノメイガ、ジアミド系殺虫剤、適用拡大
  • 担当 : 中日本農業研究センター・転換畑研究領域・栽培改善グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

家畜の濃厚飼料の原料となる子実トウモロコシの安定的供給のために国内での生産量の増加が求められている。これまで飼料用トウモロコシの多くは、黄熟期に作物全体を収穫するホールクロップサイレージが主体であったが、子実を収穫する場合には収穫時期が完熟期になるため、栽培期間が長期化し、重要害虫であるアワノメイガの食害リスクが高まる。このため、本種の被害を回避するための防除対策の重要性が高くなっている。
アワノメイガの対策として最も実用的なのは殺虫剤散布による防除であるが、飼料用トウモロコシで利用できる殺虫剤はカルタップ水溶剤とBT水和剤の2剤に加え、2023年に入ってチョウ目害虫に高い効果を示すジアミド系殺虫剤を含めた5剤の適用拡大が認められている。そこで、本研究では既登録の2剤と適用拡大されている殺虫剤のうちジアミド系殺虫剤の2剤を加えて、これらの本種に対する被害抑制効果について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ジアミド系殺虫剤であるフルベンジアミド水和剤を散布すると、散布しない場合に比べ、折損箇所数および虫孔数は減少する(図1A、図1B)。また、同じジアミド系のクロラントラニリプロール水和剤を散布しても、散布しない場合に比べ、折損箇所数および虫孔数は少なくなる(図1B、図1C)。以上のことから、ジアミド系殺虫剤の本種に対する被害抑制効果は総じて高い。
  • クロラントラニリプロール水和剤を防除適期である絹糸抽出期の10日後に散布しても、散布しない場合に比べ、折損箇所数および虫孔数は減少し、被害抑制効果は認められる(図1C)。ただし、絹糸抽出期に散布した場合に比べ、被害抑制効果が低下する。
  • カルタップ水溶剤を散布すると、被害抑制効果は十分ではないが、散布しない場合に比べ、折損箇所数および虫孔数は少なくなる傾向がある。(図1A、図1C)。
  • BT水和剤を散布すると、散布しない場合に比べ、折損箇所数および虫孔数ともに減少せず、被害抑制効果は認められない(図1B)。BT水和剤については、防除適期がふ化最盛期とされていることから、今回の試験では被害抑制効果が見られないと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 適用拡大が認められているクロラントラニリプロール水和剤、エトフェンプロックス乳剤および粉剤、フルベンジアミド水和剤、およびメタフルミゾン水和剤は、飼料用トウモロコシでも子実を収穫する時のみ使用可能で、茎葉など子実以外を使用する場合には、これまで同様にカルタップ水溶剤とBT剤の2剤しか利用できない。
  • クロラントラニリプロール水和剤、フルベンジアミド水和剤では、「無人航空機による散布」が登録されており、ドローン等による空中散布が可能である。

具体的データ

図1 薬剤散布による飼料用トウモロコシのアワノメイガに対する被害抑制効果

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2020~2022年度
  • 研究担当者 : 石島力、平江雅宏
  • 発表論文等 : 石島、平江(2023)植物防疫、77:539-543