大麦の成熟後稈折損の発生要因

要約

成熟後に稈が折損しやすい大麦品種「カシマムギ」は、折損しにくい「カシマゴール」より稈の表皮細胞層が薄く、リグニン含有率が低い。また、稈の含水率の低下が早く、乾物減少量が大きく、稈強度が大きく低下するため、成熟後に折損しやすい。

  • キーワード : 大麦、稈強度、成熟後稈折損、表皮細胞層、リグニン
  • 担当 : 中日本農業研究センター・転換畑研究領域・栽培改善グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

大麦は成熟後に稈の折損が発生することがあり、多発すると刈り取りが困難となり収穫ロスが増大する。特に、麦茶用の基幹品種「カシマムギ」(1969年育成)では発生しやすく、生産現場で大きな問題となっている。そのため、成熟後稈折損が発生しにくい品種の育成が進められ、「カシマゴール」等の品種も普及してきている。成熟後稈折損への耐性は育種過程における圃場検定で評価されるに留まり、その発生の要因はこれまで明らかにされていなかった。本研究では、成熟後稈折損が発生しやすい「カシマムギ」と、発生しにくい「カシマゴール」の稈の特性を比較することで、成熟後稈折損の発生に関与する要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 成熟後稈折損が発生した「カシマムギ」では、多くが第1節間で発生しており、第1節間の上部(穂首節の下)と第1節間の下部(節との接続部分)が頻発部位である(図1)。
  • 「カシマゴール」の第1節間の表皮細胞は2~4層であるのに対し、「カシマムギ」は1~3層と薄い(図2)。また、リグニン含有率は登熟期間を通してやや低い(図3)。
  • 「カシマゴール」の第1節間の含水率は登熟期間を通して維持されるのに対し、「カシマムギ」では出穂30日後辺りから低下し始め、乾物重の減少程度が大きい(図4)。
  • 第1節間の稈強度を示す挫折時モーメントは、両品種とも成熟が進むにつれて低下し、出穂30日後辺りまでは明確な品種間差が見られないが、成熟期には「カシマムギ」の方が「カシマゴール」より有意に小さいため、「カシマムギ」は成熟後に稈折損しやすい(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究成果は、茨城県つくば市の畑圃場およびつくばみらい市の転換畑圃場における試験で得たものである。
  • 成熟後稈折損の発生は風雨等の影響も受けるため、圃場検定だけでは評価が難しいが、本研究成果の知見を活用することで、稈折損耐性を正確に評価することができ、成熟後稈折損耐性に関する品種選抜の精度向上に役立つ。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 民間資金等(国内産麦の研究開発支援事業)
  • 研究期間 : 2021~2023年度
  • 研究担当者 : 松山宏美、清水浩晶、高橋飛鳥、小島久代、塔野岡卓司
  • 発表論文等 : 松山ら(2025)日作紀、94:169-176