要約
携帯型分光器の測定波長から算出した植生指数は、水稲「にじのきらめき」の地上部乾物重や窒素吸収量の推定に利用できる。特に2波長の比で算出する植生指数CIgreenは、追肥適期である幼穂形成期の窒素吸収量を高精度に推定可能で、目標籾数を達成するための追肥量の診断に有効である。
- キーワード : 携帯型分光器、植生指数、水稲、窒素吸収量、追肥量診断
- 担当 : 中日本農業研究センター・転換畑研究領域・栽培改善グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
農地の集約・大規模化が進む中で、少人数で多数の圃場を的確に管理する技術の開発が課題となっている。特に業務用水稲品種においては、低コスト・省力での多収が求められ、リモートセンシングなどを活用し、作物の生育量に応じた追肥を施用する技術が重要である。衛星画像や無人航空機による作物の生育量センシング技術の進歩は目覚ましいが、運用コストや画像解析等に必要な技術を考慮すると生産者への直接の導入はまだむずかしい。一方、携帯型の測定器を用いるセンシングは安価で即時に測定値が得られるため、生産規模によっては効率的であり、従来、生育診断に用いられてきた栄養指標値の計測労力を削減できる。そこで、携帯型分光器を用いて算出する植生指数による水稲「にじのきらめき」の地上部乾物重や窒素吸収量の推定精度を明らかにし、多収に向けた目標籾数達成のための窒素追肥診断手法として利用できるか検討する。
成果の内容・特徴
- 太陽高度が高い午前10時から午後2時の間に携帯型分光器でセンシングを実施すると、反射率に変換しない放射輝度値から算出する植生指数と、反射率に変換してから算出する値との相関関係は非常に強い(データ省略)。したがって、放射輝度値による植生指数を活用できる。
- 分光器から算出した6種類の植生指数(表1)による地上部乾物重の推定精度を、それらの一次回帰式の決定係数および二乗平均平方根誤差により評価した結果、幼穂形成期(幼形期)にはGNDVIが最も高く、出穂期にはNDREが最も高い(表2)。
- 追肥量診断に最も重要な幼形期の窒素吸収量は、CIgreenを用いることにより、草丈・茎数および葉身SPAD値の測定により得られる従来の栄養指標値と同等以上の精度で省力的に推定できる(表2)。
- 窒素追肥4g m-2の有無で区分すると幼形期のCIgreenとm2あたり総籾数との回帰曲線の決定係数は高く(図1)、幼形期CIgreenと追肥量から総籾数を推定できる。このことから、携帯型分光器により得られた植生指数は、目標総籾数を確保するために必要な窒素追肥量の診断に利用できる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、携帯型分光器を使用したことがあり、幼穂形成期を判定できる研究者、普及担当者など、および同様の知見を有する生産者の利用を想定している。
- 携帯型分光器による測定は、圃場内に設置した4条×3株(約0.6~0.7m2)の調査区画3反復について地上約100cmの高さで、条の真上を条に沿って動かすことで行った。露光時間は放射輝度値が飽和しない範囲で十分に高い必要がある。本成果での測定は晴れの日の午前10時から午後2時の間に行い、露光時間は0.0005秒に設定した。
- 本成果は、茨城県南部地域において「にじのきらめき」を5月上旬に移植栽培して得られたものである。品種や栽培条件が異なる場合、CIgreenと追肥量、総籾数との関係は異なる可能性がある。
- 携帯型分光器はカラーコンパスMF(ATシステム社)を使用し、放射輝度値から植生指数を算出している。反射率に変換する場合、用いる波長によっては植生指数の値が大きくなるので、追肥量診断式を補正する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 澤田寛子、寺崎亮、平内央紀、板谷恭兵、石川哲也
- 発表論文等 : 澤田ら(2024)日作紀、93:209-216