コムギ茎立期予測モデルの改良によるパラメータ決定の迅速化

要約

コムギの栽培管理上重要な茎立期を予測する3パラメータのモデルである。既存の5パラメータを使用するモデルと同等の精度を有し、より少ないデータ数でパラメータの決定が可能である。作期移動や地域連携試験で得られた実測値を用いて効率的にモデルを作成することができる。

  • キーワード : コムギ、発育予測、モデル、茎立期
  • 担当 : 中日本農業研究センター・転換畑研究領域・栽培改善グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

コムギ栽培では、生育量が急増する茎立期に追肥を行う体系が多いため、あらかじめ茎立期を予測し作業計画を策定することが必要となる。また、茎立期以降は幼穂が地表面上に出てくるため凍霜害の発生リスクが高まることから、茎立期が早まり過ぎない適切な播種時期を設定することが求められる。発育の予測にはモデルの利用が有効であるが、モデル式のパラメータを決定するには品種毎に茎立期の実測値を収集する必要があり、出穂期等と比較して労力を費やす。そこで本研究では、茎立期を予測する発育モデル式を効率的に作成することを目的として、既存のモデル式よりパラメータ数の少ない式の精度の検証を行い、パラメータ決定に必要な実測データ数や精度を向上するために必要なデータ収集の方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本モデルは、Weir(1984)のモデルを改変したものであり(改変Weirモデル)、出芽から茎立までの積算温度(°C)、低温要求性を表す春化の完了に必要な日数(日)、および日長反応性を表す限界日長(h)の3パラメータを持ち、日平均気温および日長時間を用いて出芽日から茎立期を推定する(図1)。
  • 本モデルは、水稲の発育予測式をコムギに応用した5パラメータのモデル式(堀江・中川モデル)と同等の精度で茎立期を推定することが可能である(表1)。
  • パラメータ決定に使用するデータ数が増加すると推定精度は向上するが、データ数が40以上になるとほとんど変化しなくなる(図2)。最大の学習データ数で作成されたモデルの推定誤差と有意差がなくなる最小のデータ数をモデル作成に必要な最小データ数とすると、5パラメータのモデル式の16~43に対し、本モデルでは14~34である。
  • 作期移動試験や地域連携試験等を実施し、気温と日長の幅が広い条件下で得られた発育データを使用すると、より汎用性の高いモデルを作成することができる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 変動の大きい気象条件下において追肥等の作業計画や、凍霜害のリスク判定に基づく適切な播種期の設定が可能となる。農研機構メッシュ農業気象データと連動させることにより、任意の地点で予報値や気候変化シナリオに基づく予測が可能となる。
  • モデル作成に必要な最小データ数が少なく、茎立期の実測値収集のための栽培試験を効率的に行うことにより、短期間でモデルを作成することが可能になり、新品種の迅速な普及に貢献することができる。
  • モデルのパラメータ決定および推定精度の検証は、関東以西の地点で実施した栽培試験で得られたデータに基づいており、気象条件が大きく異なる地域では推定精度が低下する可能性がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、環境省(環境研究総合推進費)、SIP
  • 研究期間 : 2005~2023年度
  • 研究担当者 : 中園江、黒瀬義孝、松山宏美、中川博視
  • 発表論文等 : 中園ら(2024)日作紀、93:49-56