イチゴの有機栽培のための病害虫管理体系

要約

イチゴの有機栽培を対象とした紫外線(UVB)照射、種子繁殖型品種、天敵放飼、太陽熱土壌消毒等の病害虫防除技術を組み合わせた病害虫管理体系である。本体系の導入によって、栽培期間を通して病害虫の発生や拡大を抑制することで、イチゴの有機栽培が可能となる。

  • キーワード : イチゴ、有機栽培、総合的病害虫・雑草管理(IPM)、天敵利用
  • 担当 : 中日本農業研究センター・温暖地野菜研究領域・有機・環境保全型栽培グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

イチゴは栽培期間が長く、病害虫の種類も多いため、有機栽培が特に困難な品目の1つとされている。そのため、有機栽培のイチゴ(有機イチゴ)の生産量はごくわずかである。これまでに、イチゴ栽培のための様々な総合的病害虫管理体系が構築されているが、これらは化学合成農薬の使用を前提としたものであるため、化学合成農薬を使用しない有機栽培のための病害虫管理体系の確立が求められている。
そこで、イチゴの育苗から本圃栽培の期間を通して化学合成農薬を使用せずに、有機栽培で使用可能な病害虫防除技術を組み合わせた病害虫管理体系を確立する。さらに本体系を標準作業手順書として取りまとめ、これを活用した普及活動を行うことによって、有機イチゴの生産拡大に資する。

成果の内容・特徴

  • 本体系では、栽培期間中のイチゴの生育ステージに応じて、各種の防除技術を組み合わせて病害虫対策を行う(図1)。育苗では病害抵抗性品種や親株由来の病害伝染リスクが低い種子繁殖型品種を用い、UVB照射、天敵放飼、有機JAS規格で許容された農薬の散布を行う。本圃栽培では5月頃に前年に開始した栽培を終了し、6月中に次作の施肥・畝立てをして、9月下旬の定植まで太陽熱土壌消毒を行う。定植直前に蒸熱処理等で消毒した苗を本圃に定植し、UVB照射、天敵放飼、有機JAS規格で許容された農薬の散布を行う(図2)。
  • 本体系の特徴は、化学合成農薬が一切使用できない有機栽培において、物理的・耕種的な防除技術、病害虫発生前の天敵放飼、有機JAS規格で許容された農薬の散布等によって、徹底的な病害虫発生の予防に重点を置いていることである。
  • 本体系を導入したイチゴ3品種の栽培試験において、2023、2024年栽培の有機イチゴ収量は3.3~4.8t/10aであり、慣行栽培のイチゴの全国平均収量3.3t/10a(2024年農林水産省作物統計)と同等の収量を確保できている(図3)。また、本体系の現地実証経営体(茨城県つくば市)において、2024年栽培では5.3t/10aの有機イチゴ収量が得られている。得られた有機イチゴの販売単価は、慣行栽培イチゴの価格を大きく上回る(表1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 現在および今後有機イチゴ栽培に取り組む生産者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 関東地域の5ha。
  • その他 :
    • 本成果情報の内容は標準作業手順書として、各防除技術の概要に加えて、使用する時期や具体的な方法を詳しく取りまとめている。
    • 本成果は茨城県つくば市で実施したイチゴの土耕・促成栽培試験の結果から得られたものであり、導入する地域や気候条件等に応じて検討が必要である。

具体的データ

図1 使用する主な技術や資材,図2 有機イチゴ栽培暦,図3 有機イチゴの可販果収量,表1 現地実証経営体の有機イチゴ栽培概要

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2020~2025年度
  • 研究担当者 : 須賀有子、山内智史、石崎摩美、後藤啓太、光永貴之、村上理都子、長坂幸吉、澤田守、Lurhathaiopath Puangkaew、椋田瑛梨佳、田村澪
  • 発表論文等 :
    • 農研機構(2026)「有機イチゴ栽培のための病害虫管理体系標準作業手順書」
      https://sop.naro.go.jp/document/detail/215 (2026年3月公開)
    • 石崎ら(2024)関東東山病虫研報、71:60-65
    • 石崎ら(2025)関東東山病虫研報、72:100-103