スマート農業技術の導入効果を試算できる「農業経営計画策定支援システム」

要約

スマート農業技術を利用した場合の農業経営指標を用いて、スマート農業技術の導入効果をシミュレートできるシステムである。農業経営条件に応じたスマート農業技術の導入や、その効果を活かした規模拡大、作付構成の設定、雇用導入などの経営計画策定の判断材料に活用できる。

  • キーワード : スマート農業、水田作経営、農業経営計画、シミュレーション、農業経営指標
  • 担当 : 中日本農業研究センター・経営支援研究部・スマート農業経営グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

高齢化や労働力不足が急速に進行する中で、農作業の効率化、作業負担の軽減、品質や収量の向上を図る手段として、スマート農業技術がますます重要になっている。しかし、スマート農業技術の導入には多くの投資を必要とする場合があり、その効果は経営規模や地域条件によって異なる。そのため、期待した効果が得られなかったり、過剰投資となったりするリスクが存在することが、導入をためらう要因の一つとなっていた。
そこで本研究では、農林水産省の「スマート農業実証プロジェクト」で収集した技術・経営データから農業経営指標を作成し、その指標を活用してスマート農業技術の導入効果をシミュレートする「農業経営計画策定支援システム」を構築する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、水田作経営を対象に農研機構が新たに作成した、スマート農業技術を利用した場合の農業経営指標(以下、「スマート農業経営指標」)のデータベースと、それを用いて個別の農業経営条件に応じた導入効果をシミュレートするWebアプリで構成される(図1)。
  • 「スマート農業経営指標」は、図2に示す気候条件や経営面積などの生産条件の組み合わせごとにスマート農業と慣行農業の10a当たりの収量、販売単価、費目別費用額、作業項目別作業時間などの導入効果に関するデータを整理したものである。なお、スマート農業を導入した場合の指標については、ロボットトラクタ、操舵支援付き田植機、ラジコン草刈機、農薬散布用ドローンなどをフルセットで導入したものである。
  • Webアプリは、自作地面積、借地の小作料、常時従事者や臨時雇用などの農業経営条件と、取得した「スマート農業経営指標」ごとの作付面積を設定することで、売上高、変動費、減価償却費、経常利益などの結果を提示する(図3)。試算結果を比較することで、農業経営条件に応じたスマート農業技術の導入や、その効果を活かした規模拡大などの経営計画を検討できる。
  • Webアプリの試算結果には、旬別作業時間が積み上げ棒グラフで表示される(図4)。これにより、移植や収穫などの繁忙期における労働負荷の現状と、スマート農業技術の導入による省力効果を視覚的に把握でき、作付構成や雇用導入などに対する判断材料として活用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 普及指導機関、農業経営コンサルタント、水田作経営者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : スマート農業の導入を推進する普及支援組織。
  • その他 : 本システムを利用するにはログインアカウントの登録が必要である。ログインアカウントの登録は、必要情報(氏名、所属か職業、連絡先メールアドレス、利用目的)を添えて へ申し込む。一部のスマート農業技術のみを選択して導入する場合の効果を示す農業経営指標については、提供方法を検討中である。

具体的データ

図1 農業経営計画策定支援システム」の構成,図2 「スマート農業経営指標」の生産条件の組み合わせ,図3 Webアプリの概要,図4 Webアプリで表示される旬別作業時間(積み上げ棒グラフ)の結果

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(スマート農業技術の開発・実証・実装プロジェクト、スタートアップ総合支援プログラム、スマート生産方式SOP(スマート農業技術導入・運用手順書)作成研究)
  • 研究期間 : 2019~2025年度
  • 研究担当者 : 松本浩一、宮武恭一、梅本雅、若林勝史、大室健治、寺谷諒
  • 発表論文等 :
    • 松本(2025)関東東海北陸農業経営研究、115:29-37
    • 松本(2024)農研機構技報、16:42-46
    • 宮武(2024)九経連四季報、2024夏:6-9