要約
飼料用トウモロコシ圃場において貯穀チョウ目害虫の捕獲および羽化調査を行ったところ、3科4種が確認され、その中には重要害虫であるノシメマダラメイガ、バクガが含まれる。このことから、これら害虫が貯蔵施設へ持ち込まれるリスクを考慮する必要がある。
- キーワード : 飼料用トウモロコシ、貯穀チョウ目害虫、ノシメマダラメイガ、バクガ、カザリバガ科
- 担当 : 中日本農業研究センター・転換畑研究領域・栽培改善グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
貯蔵された穀物を食害する貯穀害虫は、主に穀物の貯蔵倉庫やその周辺で発生するが、野外圃場で作物に産卵し、その収穫物と供に貯穀環境に持ち込まれるというケースも発生源として考えられている。しかしながら、実際に野外圃場で産卵され、貯蔵環境に持ち込まれ問題となる例としては、海外でのムギ類におけるバクガの混入事例報告に限られている。我が国の主食であるコメに関しては、15°Cでの貯蔵により貯穀害虫の繁殖を抑えた条件に管理されているが、最近普及が進んでいる飼料用トウモロコシの子実に関してはコスト的に低温貯蔵は難しく、野外圃場において貯穀害虫が混入したトウモロコシが持ち込まれた場合には、発生・蔓延する可能性がある。
そこで、本研究では飼料用トウモロコシの子実に発生しうる貯穀害虫に対する知見を得るため、それら害虫のうち主要な分類群であるチョウ目害虫に着目し、飼料用トウモロコシ圃場においてそれら害虫のフェロモントラップによる発生調査および採取される雌穂を加温することによる羽化調査を行い、飼料用トウモロコシにおいて野外圃場から貯蔵環境にこれらの害虫が混入する可能性について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 野外圃場より採取した飼料用トウモロコシの雌穂から羽化が確認される貯穀チョウ目害虫は3科4種(合計87個体)で、そのうち、重要害虫であるノシメマダラメイガ、バクガが含まれる(表1)。
- 野外圃場において、ノシメマダラメイガの発生消長をフェロモントラップで調査すると、収穫時期となる9月下旬よりも前から発生し、その後も断続的に発生している(図1)。この結果は、本種成虫が収穫期のトウモロコシ雌穂に産卵する可能性を示し、実際、圃場から得られる雌穂から本種成虫の1個体の羽化が認められる(表1)。
- バクガ(図2)については、今回の調査において最もトウモロコシの雌穂からの羽化が認められる種(表1)で、海外や日本ではコムギなどの収穫子実からの羽化が認められているため、飼料用トウモロコシにおいても野外から貯穀環境に混入するリスクが高い種となる可能性がある。
- カザリバガ科については、日本の貯穀環境(精米工場)において発生の報告のあるトウモロコシトガリホソガの羽化が今回の調査でも確認されている(表1)。本種についても、今後トウモロコシ子実の貯蔵が拡大すると、野外圃場から貯蔵環境への発生リスクが高まることが懸念される。
成果の活用面・留意点
- 貯蔵環境は野外圃場に比べて温度が安定しているなど発育・繁殖に有利な状況であるため、貯穀害虫は作物害虫と異なり、貯蔵される穀物にわずかでも混入すると、大きな被害になる可能性がある。したがって、貯穀害虫に関しては極力発生がない状態が求められる。今回の貯穀チョウ目害虫についても、捕獲および羽化が認められるサンプル数は少ないが、上記の理由から、発見されていること自体が大変重要な意味を持つ。
- 今回の調査から得られている貯穀チョウ目害虫のサンプル数は少ないが、これは圃場全体から得られるごくわずかな子実量の調査結果である。実際には、圃場全体から収穫するため、今回示される害虫が収穫物に混入するリスクは本調査結果よりも高いと予想される。
- 今後、チョウ目害虫の混入リスクを正確に見積もるために、収穫後のトウモロコシ子実の乾燥処理過程が、混入したそれら害虫の生存に与える影響を調査する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、その他外部資金(JRA畜産振興事業)
- 研究期間 : 2024~2025年度
- 研究担当者 : 石島力、宮ノ下明大、那須義次(大阪公立大)
- 発表論文等 :
- 石島ら(2025)都市有害生物管理、15:85-95
- 宮ノ下ら(2025)都市有害生物管理、15:107-113