要約
「にじのきらめき」の収量には苗立ち数よりも窒素施用量が大きく影響する。同一の施肥法であれば苗立ち数が多いほど葉色は薄く推移するが収量は大きく変わらない。籾数と精玄米重との関係は湛水直播栽培と移植栽培とで差異はないが、同レベルの籾数に必要な穂数は湛水直播栽培が多い。
- キーワード : 水稲、にじのきらめき、湛水直播栽培、北陸地域
- 担当 : 中日本農業研究センター・水田利用研究領域・作物生産システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
近年、日本の中食・外食向けの米の消費は米消費全体の3割を超え、今後長期的にも多収性と良食味性を具備した水稲品種と、その品種に適した省力で低コストの栽培技術が求められる。良食味で多収、なおかつ優れた高温登熟性を持つ水稲品種「にじのきらめき」は、令和7年4月1日時点の奨励品種採用県は6県、令和7年度の産地品種銘柄は25県と大きく普及している。「にじのきらめき」の移植栽培については標準作業手順書(https://sop.naro.go.jp/document/detail/22)等で一定の収量を得るための生育目安が示されているが、省力・低コストである直播栽培については知見がない。また、移植栽培と大きく異なる点として、直播栽培では播種量が同じでも年次による気象条件や水管理等の差異によって現場での個体密度(単位面積当たりの苗立ち本数)の変動が大きく、収量の高位安定を図る上で、苗立ち数に応じた生育と収量性との関係を明確化する必要がある。
そこで、標準作業手順書の基になっている移植栽培のデータが得られた新潟県上越市の水田圃場において、北陸地域で最も普及している直播栽培の方式である湛水直播栽培を行い、移植栽培と同じ栽培年次に得られたデータから湛水直播栽培と移植栽培との生育、収量性も比較して、「にじのきらめき」の湛水直播栽培における生育と収量性の特徴を明確化し、現場での安定多収につなげる。
成果の内容・特徴
- 「にじのきらめき」の湛水直播栽培では、精玄米重に及ぼす影響は苗立ち数よりも窒素施用量で大きい(図1)。また、窒素施用が同一であれば、苗立ち数が本条件レベルで変化しても収量は大きく変わらない(図1)。苗立ち数が変わることで、収量構成要素の内、穂数と一穂籾数が大きく変化する(図1注釈)。
- 窒素施用を同一(多肥)として茎数と葉色の推移を播種量ひいては苗立ち数の処理間で比較すると、苗立ち数が多いほど茎数は多く推移し、葉色は薄く推移する(図2)。少肥も同様の傾向である(データ省略)。つまり、収量は同等でも苗立ち数によって生育過程は全く異なる。
- 籾数が多いほど精玄米重は高くなり、移植栽培と湛水直播栽培とは類似した関係を示し、二次曲線による回帰の決定係数は0.9393と高い(図3左)。一方、同レベルの籾数を得る上では、移植栽培よりも湛水直播栽培の方が穂数を多く要し、湛水直播栽培の中でも、表面点播より表面散播と土中条播の方が多くの穂数を要する(図3右)。ただし、同一の湛水直播栽培の方式では、収量を確保する上で、穂数が少ない場合は一穂籾数を多くすることで単位面積当たりの籾数を一定以上にする必要がある(図1注釈)。
- 一般的な苗立ち数の目標とされる約100本/m2で、玄米タンパク質含有率を6.5%程度に留めて良食味性の維持を前提とする目標収量、穂揃い期葉色の目安を表1に示す。湛水直播栽培では移植栽培より目標収量を低く、660kg/10a程度とし、その際の籾数は31千粒/m2、穂数は移植栽培より多く500~540本/m2にする。穂揃い期葉色の目安はSPAD値で34~35であり移植栽培より低い。
成果の活用面・留意点
- 主に北陸地域向けに、「にじのきらめき」の湛水直播栽培において苗立ち数に応じて多収を得る上で、適切な生育制御を図るための参考とする。
- 新潟県上越市の水田圃場(細粒強グライ土)で2019年・2020年4月下旬播種の研究に基づく。
- 表面散播と表面点播は鉄コーティング種子、土中条播はカルパーコーティング種子を用い、それぞれの栽培法に一般的な播種後の水管理による試験結果に基づく(発表論文等の2を参照)。
- 十分な雑草防除、病虫害防除による試験結果に基づく。
- 「にじのきらめき」の出穂期は「コシヒカリ」とほぼ同等であり、本成果の基肥はまるしん水稲用基肥一発肥料B(直播専用コシヒカリ、N27%、P2O517.4%、K2O10%、窒素27%の内訳は、速効性が2.6%、LP70が10.8%、LP100が10.0%、LP120が3.6%、JA全農)、穂肥は硫安を使用。
- 倒伏については基肥12kgN/10a、穂肥4kgN/10aとしても軽微であることを本研究では観察しているが、中山間地で日照条件が不良な場合や紋枯れ病が多発すると甚大な倒伏の事例があるので留意する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2019~2020年度
- 研究担当者 : 大平陽一、石丸努
- 発表論文等 :
- 石丸ら(2023)日作紀、92:173-183
- 大平、石丸(2025)日作紀、94:425-439