要約
有機茶の生産・流通・販売が、生産立地によって異なる特徴をもつことを整理した立地別有機茶生産・流通・販売モデルである。本モデルを用いることで、平坦地と中山間地それぞれの生産体制や流通構造を踏まえた産地づくりや販路戦略の検討支援に活用できる。
- キーワード : 有機茶、生産立地、生産、流通、販売
- 担当 : 中日本農業研究センター・経営支援研究部・次世代経営体育成グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
日本茶の輸出量と輸出額は近年大きく増加しており、特に海外では有機茶の需要が高まっている。国内では鹿児島県などの平坦地で有機茶の生産が拡大しており、効率的な生産体制の構築が進んでいる。一方、静岡県等の中山間地では圃場条件から規模拡大が難しく、生産効率や流通面で不利な状況が続いている。しかし、中山間地の有機茶園は在来品種の維持や地域の多面的機能の発揮に寄与しており、その存続は地域にとって重要である。平坦地・中山間地のいずれにおいても、有機茶の持続的な生産拡大と安定的な流通・販売を実現するためには、各地域の生産立地の特徴を踏まえた取り組みが必要である。そこで、平坦地と中山間地の有機茶生産・流通・販売の特徴を茶生産組合へのヒアリング調査結果を基に整理し、生産立地を踏まえた有機茶生産・流通・販売モデルを提示する。
成果の内容・特徴
- 茶の生産体制は、生産立地によって特徴が異なり、有機茶の生産体制も同様である(表1)。平坦地では大規模な圃場を活かし、乗用摘採機による効率的な摘採と大量生産が可能である。一方、中山間地では斜面圃場が多く、乗用摘採機と可搬摘採機を併用する体制となり、生産量は平坦地に比べ少量である。
- 有機茶の主な取引先は、平坦地・中山間地のいずれにおいても茶商との取引が中心である。平坦地では国内外の需要に応じて茶商や生協との大ロットの契約栽培が可能である(表2)。中山間地では、これまで茶商や生協との長期的な関係構築を通じてシングルオリジンなど高付加価値商品の生産・販売に取り組んできたが、近年、主要な取引先から生協が外れている。
- 生協向けの有機茶供給は、近年、供給量の問題から中山間地から平坦地へと移行している。平坦地では生産量の多さを活かして生協・小売店との取引が安定しているが、中山間地では生協向け需要が減少しているものの、輸出向けの少量高品質生産へとシフトし対応している。
- 平坦地では、茶商や生協などの大ロットの契約を主軸に、自販や県内小売との小ロットの契約を行い複数の販路を維持する体制を確立しており、中山間地では、組合・茶商・輸出業者の3者が連携して流通・販売体制を組むことで、少量ながらも輸出向けの安定供給が可能な体制を確立している。これらは、それぞれの生産立地を踏まえた有機茶生産・流通・販売モデルとして活用可能である(図1)。
成果の活用面・留意点
- 有機茶生産の開始あるいは維持を目指す地域において、生産・流通・販売方策を検討する際の参考として活用できる。特に、立地条件に応じた生産体制や流通モデルの違いを踏まえることで、地域に適した産地づくりや販売戦略の検討が可能である。
- 本成果で想定する中山間地は、山村振興法によって振興山村として指定されている地域であり、平坦地は同法の振興山村に該当しない地域である。成果を活用する際には、これらの地域区分を前提として検討する必要がある。
- 本成果は、生産立地の特徴に基づいて整理したものであるが、地域ごとの圃場条件や既存の流通ネットワーク、生産組織の状況は異なる。本成果を利用する場合、地域特性にあわせて調整する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2023~2025年度
- 研究担当者 : 中丸京子、澁谷仁詩、吉田克志、森嶋輝也
- 発表論文等 : 中丸、森嶋(2025)フードシステム研究、31:247-252