営農管理支援のためのスマホアプリおよびクラウドサービス

要約

生産者団体が生産者と営農情報を共有し、管理するためのクラウドサービスを構築する。生産者は、ウェブブラウザ、スマホアプリ、手書き帳票のいずれかで自身の情報を記録しクラウド上に保存できる。サービスを通じて、生産者団体における情報の管理と共有を実現する。

  • キーワード:クラウドサービス、スマホアプリ、ウェブブラウザ、営農管理、生産履歴
  • 担当:北海道農業研究センター・寒地畑作研究領域・スマート畑作グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

JA等の生産者団体において、生産者に生産履歴帳票の提出を求めることが一般的に行われている。IT機器の普及に伴い、情報を電子化して蓄積できるようなシステムが農業現場でも利用され始めている。特に近年は、スマートフォンの普及が進んだことで、スマホアプリによる情報管理の望む声が多い。一方で、農業就業人口の高齢化を背景に、従来の紙ベースでの情報管理を希望する生産者も少なくない。
そこで、営農に係る様々の情報をウェブブラウザおよびスマホアプリで管理できるクラウドサービスを構築する。また、IT機器を用いないユーザには、手書き帳票による記録を電子化し、同一のクラウド上で蓄積する仕組みを提供する。これらの仕組みにより、生産者団体の構成員のすべての営農管理情報をIT機器使用の有無に関わらず統一的に管理することを可能とする。
システムの利用者として、個々の営農情報をシステム上に登録する利用者(以下、一般ユーザ)と一般ユーザの管理を行う利用者(以下、管理者ユーザ)の2種類のユーザに分け、両ユーザに対して適切なアカウント制御を行うことで、生産者団体において情報共有が可能な仕組みを実現する。これらにより、農業現場における適正な営農管理に資する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、JA等の生産者団体での運用を前提としている。利用の形態は、管理者ユーザと一般ユーザの2つがあり、管理者ユーザは自身の団体の全一般ユーザのデータにアクセス可能である。一般ユーザは、自身のデータにのみアクセスできる。また、一般ユーザは子ユーザを登録することで、複数の子ユーザが一つの一般ユーザの情報を共同管理することも可能である。
  • データを入力する方法は、PCのウェブブラウザ(図1)、スマホアプリ(iOS、 Android)(図2)、専用の手書き帳票の3種類から選択できる。手書き帳票は、スキャナで画像化したデータ(TIFF画像)をサーバに送信することで、サーバ上のOCRエンジンにより電子化される(図3)。電子化された情報はウェブブラウザ上で読み取り結果を確認する機能を用い管理者ユーザが必要に応じて修正等を行った後、データをクラウド上に登録する。情報がクラウド上に格納された後は、ウェブブラウザやスマホアプリで入力された情報と同様に、ウェブブラウザ等での閲覧や管理ができる。
  • 一般ユーザは、各栽培単位で営農に係るデータをクラウド上に蓄積することができる。蓄積できるデータの種類は、耕種概要、圃場、作業、生育の4つのカテゴリ。作業に関する情報は、肥料、農薬、収穫が標準項目であり、その他の作業については管理者ユーザがマスタに登録することで選択ができる他、一般ユーザも任意項目を追加入力できる。また、作業者や農業機械についての情報を予めマスタ登録しておくことで、作業者ごとの労働時間や機械の稼働時間を入力することが可能になる。
  • 圃場の区画情報をポリゴン情報として登録しておくことで、地図や衛星画像上で自身の圃場を表示することができる。地図上の圃場表示からのリンクで各圃場のデータに素早くアクセスすることができる。ポリゴンの登録は任意で、圃場番号などの文字情報で圃場を管理することも可能である。

成果の活用面・留意点

  • 農業共同組合などの生産者団体における営農管理支援に活用できる。
  • 本システムは団体で利用することから、管理者ユーザを置く必要がある。一般ユーザの管理やマスタデータの整備などの業務は管理者ユーザが行う。

具体的データ

図1 ウェブブラウザ版メイン画面,図2 スマホアプリ(Android版)

その他

  • 予算区分:交付金、農林水産省(スマート農業技術の開発・実証プロジェクト)
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:伊藤淳士、遠藤智章(日興通信(株))、宮本英樹(日興通信(株))、阿部佳史(日興通信(株))
  • 発表論文等: 伊藤淳士(2021)職務作成プログラム「営農管理支援のためのスマホアプリおよびクラウドサービス」、機構-K29