搾油粕(かす)の飼料利用が可能なダブルローナタネ品種「ペノカのしずく」の北海道における適応性

要約

「ペノカのしずく」のグルコシノレート含量はダブルローナタネの基準を満たしており、搾油粕はタンパク質飼料として利用が可能である。また、収量性や寒雪害抵抗性は「キザキノナタネ」と同等に優れることから、北海道において「キザキノナタネ」に置き換えて普及が可能である。

  • キーワード : ナタネ、ダブルロー品種、グルコシノレート含量、寒地適応性、飼料利用
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地畑作研究領域・畑作物育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

近年、北海道では転作作物や輪作作物として、ナタネの作付面積が拡大している。北海道の主力品種「キザキノナタネ」は収量性や含油率が高く、過剰摂取により心臓障害を起こす可能性のあるエルシン酸が含まれていないため、国産ナタネ油原料として使用されている。しかし、「キザキノナタネ」は、動物の甲状腺障害に関与するとされるグルコシノレートが多く含まれているシングルローナタネ品種である。そのため、搾油の際に海外産のダブルロー(無エルシン酸、低グルコシノレート)ナタネ品種と区別して取り扱う必要があり、販路が限られている。ダブルローナタネ品種の搾油粕は、数少ないタンパク質豊富な国産飼料として利用価値が高いことから、現在の「キザキノナタネ」から寒地適応性のあるダブルローナタネ品種への切り替えが求められている。
しかしながら、これまでに北海道に適したダブルローナタネ品種は存在しなかった。そこで、北海道への導入を目的として、東北農業研究センター育成のダブルローナタネ品種「ペノカのしずく」の北海道における適応性を評価する。

成果の内容・特徴

  • 北海道の各地において「ペノカのしずく」は「キザキノナタネ」と比較して、抽苔期や開花期は2~3日程度遅いが、成熟期は1~3日程度早い。また、草丈はやや高いが倒伏程度は同程度である(写真1)。寒雪害被害程度は「キザキノナタネ」と同程度であり、既存のダブルローナタネ品種「キラリボシ」より優れる。(表1)
  • 「ペノカのしずく」の子実収量は、「キザキノナタネ」と同程度に優れる。千粒重および容積重は「キザキノナタネ」より軽く、「キラリボシ」より重い。また、含油率および酸価は「キザキノナタネ」と同程度である。(表1)
  • 「ペノカのしずく」の子実中のエルシン酸含量やグルコシノレート含量はダブルローナタネの基準を満たしている(表1、図1)。また、搾油粕は粗タンパク質含量が高く、濃厚飼料原料として利用することが可能である(表2)。
  • 「ペノカのしずく」は、北海道における適応性に優れ、ダブルロー特性を有することから、北海道優良品種に認定され、「キザキノナタネ」に置き換え1,000 haの普及が見込まれる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : ナタネ生産者、加工事業者、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積 : 北海道優良品種として北海道のナタネ作付け地帯・1,000 ha
  • 他のナタネ品種およびアブラナ科植物と交雑するので、隔離された採種圃場で種子増殖する。
  • 一般栽培では、採種圃由来のダブルローが保証された種子を使用する。
  • 菌核病抵抗性は強いが、他の病害虫等の連作障害への対策のため、適切な輪作を行う。

具体的データ

図1 開花期頃の「ペノカのしずく」の草姿,表1 北海道における「ペノカのしずく」の生育・品質評価,図2 北海道における「ペノカのしずく」のグルコシノレート含量,表2 ナタネ粕の一般飼料成分

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2019~2022年度
  • 研究担当者 : 大塚しおり、石黒浩二、原尚資、根本英子、小花和宏之、矢島昂、川崎光代
  • 発表論文等 :
    川崎ら「ペノカのしずく」品種登録第28973号(2022年3月15日)
    北海道の優良品種に認定(2023年3月7日)