ジャガイモシロシストセンチュウ抵抗性が"中"の加工・生食用バレイショ品種「きたすずか」

要約

「きたすずか」は"中"のジャガイモシロシストセンチュウ抵抗性とジャガイモシストセンチュウ抵抗性をもつ加工・生食用品種である。ジャガイモシロシストセンチュウの増殖が感受性品種の10分の1程度であるため、「きたすずか」は発生地域拡大防止策の一つとなることが期待される。

  • キーワード : バレイショ、ジャガイモシロシストセンチュウ、抵抗性、加工・生食用
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地畑作研究領域・畑作物育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

2015年に日本で初めて発生が確認されたジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida Gp)は、世界的にもバレイショ生産における被害が深刻な害虫である。Gpの発生地域では、植物防疫法に基づく緊急防除が実施され営農活動が制限されるなど地域農業に甚大な影響を与えており、Gpの発生地域拡大防止が重要な課題となっている。
抵抗性品種の作付はGpの防除・拡大防止策の根幹であるが、これまでに国内で利用可能だったのは海外で育成されたでん粉原料用の「フリア」のみで、発生地域からはでん粉原料用以外のGp抵抗性品種の早期育成が求められている。「きたすずか」は "中"のGp抵抗性をもち、加工・生食用に利用可能な新品種である。

成果の内容・特徴

  • 「きたすずか」はGp抵抗性およびジャガイモシストセンチュウ(G. rostochiensis、 Gr)抵抗性を備えた「Eden」を母、Gr抵抗性で調理適性が優れる早生の「十勝こがね」を父として、発生が確認される前の2012年に交配した集団から選抜された品種である。
  • 「きたすずか」の塊茎は「男爵薯」と同じ"円形"で、目の深さは「男爵薯」より浅い"中"である。皮色は"淡ベージュ"、肉色は"白"で「男爵薯」や「さやか」と同じである(図1)。
  • 国内で育成された初めてのGp抵抗性品種で、現在国内で栽培されている加工・生食用品種にはない"中"のGp抵抗性をもち、Gr抵抗性も併せもつ。Gpを含む土壌で栽培した場合のGp増殖率を、感受性品種の10分の1程度に抑えられる(図2)。
  • 既存のサラダ加工用品種である「さやか」より枯ちょう期が早い"やや早"で、収量は「さやか」並である(表1)。
  • サラダやチルド、冷凍ダイスカットへの加工や生食用には適するが(表2)、フライドポテトやポテトチップスへの加工には適さない。

成果の活用面・留意点

  • Gp抵抗性が"中"であり、感受性品種に比べてGpを増殖させるリスクが低いため、Gp発生地域や周辺地域の「男爵薯」や「さやか」等のGp感受性の加工・生食用品種と置き換えて普及させることにより、Gpの発生地域拡大を防止するための備えの一つになることが期待される。
  • Gp発生履歴のある圃場における栽培については、国や北海道の指導に従う。
  • 褐色心腐が多発する場合があるので、高温・乾燥条件を避けるために適切な培土管理を行うとともに、多肥・疎植を避ける。
  • 葉の色むらや凹凸が強くウイルス病徴が見分けづらいので、ウイルス株の抜き取りに注意する。

具体的データ

図1 「きたすずか」の塊茎 白スケールバーは5cm,図2 「きたすずか」の栽培によるGp密度変化(北農研 2019年),表1 「きたすずか」の生育および収量成績,表2 「きたすずか」の品質・加工特性

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(【革新的技術開発・緊急展開事業】先導プロジェクト)
  • 研究期間 : 2012~2021年度
  • 研究担当者 : 浅野賢治、下坂悦生、赤井浩太郎、片山健二、田宮誠司、西中未央、岡本智史、津田昌吾、相場聡、奈良部孝、坂田至
  • 発表論文等 : 片山ら「きたすずか」品種登録出願公表第36247号(2022年9月28日)