要約
デジタルデバイスを用いてより簡便にデータを取得し、その場で過去のデータを容易に閲覧できる電子野帳システムである。本システムの導入により、作業の効率化・省力化が進むと同時に入力ミスも大幅に削減できる。
- キーワード : 電子野帳、デジタルデバイス、圃場調査、効率化、省力化
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地畑作研究領域・畑作物育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
近年は経費の削減に伴う作業の効率化が求められており、農業試験場、農業改良普及センターなどの農業に関わる各種機関において職員の負担が増している。また、圃場での形質データの記録には紙野帳が用いられており、系統数や調査項目が増加している状況のなか、様々な形質の測定、野帳への書き込み、データ入力などの一連の煩雑な作業の実施が困難になってきている。そこで、近年急速に発達したデジタルデバイスを用いた作業の効率化、データ集約の省力化を目的として、既成ソフトである FileMakerをベースとした電子野帳の開発し、新たなデータ収集システムを構築する。
成果の内容・特徴
- 開発した電子野帳は、ユーザーによって自由に改変することが可能なプログラムであり(図1)、レイアウトは様々な作物とその調査項目に応じて簡便に変更できる。データ入力はPC・タブレット等から行う。トップメニューの全項目から品種・系統、播種情報、特性検定情報、過去の収量データ、品質情報、遺伝子情報が閲覧できる。
- 市販のBluetooth機能付きデジタルデバイス(図1)と電子野帳を組み合わせることにより、簡便かつ正確に穂長や稈長を測定でき、調査の効率化に大きく寄与する。また、葉緑素計(Bluetooth 機能付きSPAD-改良版)を用いて電子野帳に記載できるシステム(図2)により簡便にSPAD値の調査と記帳が同時にできるため、大量のサンプリングを効率的に行える。
- 本システムの導入例を挙げると、小麦の稈長および穂長測定に電子野帳を導入することにより、人員および調査時間の約7割を削減できる(表1)。また、小麦葉のSPAD 値の測定に導入することにより、調査時間、および人員の約7割を削減でき、ほとんどの入力ミスを防ぐことができる(表2)。このように、電子野帳とデジタルデバイスを導入することにより効率的なデータ取得と正確な入力の両立が可能となる。
- 本システムは小麦の他、大麦、馬鈴薯、水稲等の育種研究や様々な作物の形質調査で活用されている。
成果の活用面・留意点
- 本システムを運用するにはFileMaker ProおよびFileMaker Goが必要である。PC上での動作はFileMaker Pro(対応Windows、iOS等)、タブレット(iPad)上ではFileMaker Goにおいて確認済みである。
- 入手方法:農研機構ホームページの「職務作成プログラム利用に関するお問い合わせ」に必要事項(機構-K21)を記載すると農研機構より本システムのファイルが送付される。送付ファイルには、電子野帳プログラム・取扱説明書等が含まれる。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2014~2022年度
- 研究担当者 : 寺沢洋平、岡田昌宏、鈴木雄大、兼光宏学、川口謙二、伊藤美環子、八田浩一、田引正
- 発表論文等 :
- 寺沢ら(2021)農研機構研究報告 9:1-10
- 寺沢ら(2020)職務作成プログラム「麦類育種研究向けに特化した電子野帳システム」、機構-K21