要約
輸入アルファルファ(AL)乾草の代替に出穂始め刈りオーチャードグラス1番草サイレージ(OG)を乳牛に給与すると採食量、脂肪補正乳量は増加し、尿中窒素排泄率は低減する。AL乾草の代替としてOGの利用は乳生産と窒素利用効率向上、輸入飼料節減に有効である。
- キーワード : 乳生産、自給粗飼料、オーチャードグラス、早刈り
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・乳牛飼養グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
トウモロコシサイレージやイアコーンサイレージは高デンプンの自給飼料として利用されているが低タンパク質飼料であるため、これらを用いた飼料設計では良質なタンパク質源飼料が必要となる。AL乾草は、高タンパク質で採食性の良い粗飼料であり、入手が容易であるため広く利用されている。しかし、我が国でAL乾草の生産は困難であり、飼料自給率向上の観点からこれに代わるタンパク質源粗飼料の生産利用が望まれる。一般的にイネ科牧草は、マメ科牧草よりも乳牛へ給与した際の採食量や乳生産性は劣る。しかし、イネ科牧草であっても再生力の強いオーチャードグラスのような草種は早刈り収穫が可能であり、早刈りにより高タンパク質でかつ高繊維消化性の飼料が得られる。また、その栄養価はAL乾草よりも高い。そのため、このような特徴を持つOGはAL乾草の代替飼料としてのみならず、代替利用の際に濃厚飼料の節減も期待できるが、その給与効果は明確でない。
そこで、本研究では濃厚飼料低減を伴うAL乾草からOGへの代替給与が乳牛の飼養成績および窒素出納に及ぼす影響について検証することにより、AL乾草からOGへの代替給与効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- AL乾草と比較してOGの粗タンパク質含量は低いが、その易分解性画分の割合は高い。またOGの中性デタージェント繊維含量は高いが、その第一胃内有効分解度は高い(表1)。
- 飼養成績を検証するために調製した3種類の発酵TMRの飼料構成(AL区、MIX区およびOG区)は、AL乾草および圧ペントウモロコシとOGの混合比率を直線的に変化させ、その他原料については同一比率にて混合する設計とし、供試TMRの粗タンパク質含量と可消化養分総量は同一設定である(表2)。
- 乾物摂取量、脂肪補正乳量、乳脂肪率および中性デタージェント繊維消化率はOG区、MIX区、AL区の順に高い(表3)。OG代替給与は採食量および乳量向上に有効である。またこの増加は圧ペントウモロコシ低減を伴うものであり、OG代替給与は濃厚飼料節減にも有効である。
- 乳牛の窒素摂取量あたりの糞中窒素排泄率は飼料処理間で差はないが、OG増給に伴って尿中窒素排泄率は低下し、窒素蓄積率は増加する。また血中尿素態窒素濃度はOG増給に伴って低下する。OG代替給与は尿への窒素排泄を低減し、さらにその尿中へ排泄されなかった可消化窒素は、乳および体蓄積へ配分され、乳牛の窒素利用効率を向上させる(表4)。
成果の活用面・留意点
- 乳牛への輸入アルファルファ乾草から早刈りオーチャードグラス1番草サイレージ代替給与の基礎的データとして活用できる。
- 供試したオーチャードグラス1番草は出穂始めに収穫したものであり、その乾物収量は3.42t/haである。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2019~2021年度
- 研究担当者 : 宮地慎、矢島昂、多田慎吾、須藤賢司、青木康浩
- 発表論文等 : 宮地ら(2021)日草誌、67:141-148