要約
農研機構メッシュ農業気象データ(空間解像度1km)を、国土数値情報50mメッシュDEM(数値標高モデル)を用いて50mメッシュに補間する手法である。比較的平坦な北海道の大規模畑作地帯向けに特化することにより、事前観測・地形因子解析を必要とせず、低コストに作成できる。
- キーワード : メッシュ気象情報、高精細、気温減率、大規模畑作地帯
- 担当 : 北海道農業研究センター・研究推進部・技術適用研究チーム
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
農研機構メッシュ農業気象データシステムは運用開始から10年近くを経て、多くのユーザーが日常的に使用しているが、空間解像度に関して約1km四方の平均値ではなく、より細かな圃場単位での提供のニーズも大きい。一方、中山間地帯などの複雑地形で形成される細かな気温分布を再現するため、西日本農業研究センターで50mメッシュ精密気象データ(SOP20-406F)が開発された(以下「西農研メッシュ」)。これは一つのアメダス観測点あたり10~20個所で3か月以上の気温の事前観測を実施して、ステップワイズ分析で地形因子モデルを作成するもので、北海道十勝地域のような広域に展開するためには数百か所の観測点を設置する必要がある。また、機械営農を前提とした大規模畑作地帯には上記のような複雑地形は見られないため、この方法はオーバースペックでもある。そこで、対象エリアを北海道の大規模畑作地帯に限定した低コストな高精細気温メッシュ情報の作成方法を開発する。
成果の内容・特徴
- 本高精細気象メッシュは、農研機構メッシュ農業気象データシステムで提供されている1kmメッシュの日平均気温、日最高気温、日最低気温を50mメッシュに空間補間して作成される(図2)。その際、1kmメッシュの平均標高と50mメッシュの平均標高との高度差に応じた気温差を足し引きするが、その係数(気温減率)を一般に使われる定数(-0.65°C
/100m)ではなく、気象庁の数値予報から日々算出する(図1)。
- 地形因子モデル作成とそのための事前観測は不要であり、低コストに作成が可能である。
- 気温減率は925hPa気圧面(およそ海抜800m程度)と1000hPa気圧面(海面付近)との気温差を気圧面の高度差で除して求める。高度差は海面更正気圧と各気圧面気温から測高公式を用いて計算する。材料となる数値予報モデルは、過去値にはMSM(メソ気象モデル)、予報値にはGSM(全球モデル)を用い、各予報時間の最初の値(予報初期値)を1日分平均して日平均値を作成する(日平均気温用)。最高、最低気温用にはそれぞれ午後および明け方の平均値を別途計算する。
- 1kmメッシュの平均標高と50mメッシュ平均標高との差に応じて補正量が計算され、十勝平野の大規模畑作地帯では、西農研メッシュと遜色ない精度が得られる(図3)。
成果の活用面・留意点
- 50mメッシュ単位で指定した緯度・経度に対してデータが得られるため、農林水産省の農地区画情報(筆ポリゴン)と組み合わせて圃場単位の気温を推定するなどの応用が可能である。
- 北海道十勝平野の大規模畑作地帯のようなほぼ平坦な地域を対象としており、急斜面や盆地、谷筋などの複雑地形や、島しょ部のように水圏の影響を受ける地域には適していない。導入しても十分な精度が得られない場合は西農研メッシュを選択する必要がある。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 小南靖弘、根本学
- 発表論文等 : 小南、特願(2022年10月21日)