要約
バレイショの防除畦に2本のバレイショを植えない条を設けその直上を防除機の車輪が通るように防除を改良すると、生育期間中に防除畦で発生する土塊が減り収穫畦数も減るため、収穫に要する作業時間が約10%減る。バレイショ生産全体では約6%の投下労働時間削減となる。
- キーワード : 省力化、種いもの使用量、土塊、バレイショ、防除畦
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地畑作研究領域・スマート畑作グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
バレイショの収穫作業は早急な省力化が求められているが、機上での土塊や礫などの選別作業が効率化を妨げている。特に栽培期間中の防除作業により土塊が多発すると、収穫時の作業速度が低下し、土塊多発地点に合わせた収穫時の人員確保が求められる。土塊が発生しやすい防除機の踏圧が通常畦に及ばないように防除畦を改良すると共に(図1)、防除畦の土塊減量に向けた畦配置と作業体系を提案し、本防除畦改良による土塊や緑化いもの発生量の削減効果を明らかにする。また、畦数減による種いも使用量と収量への影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- バレイショ収穫時の土塊の発生量は防除畦で明らかに多い(データ省略)。防除畦での土塊発生量を低減するために防除畦の2本にバレイショを植えずに、防除機・トラクタのタイヤが従来畦の頂部にあたるラインを走るように防除畦を改良する(図1)。
- 改良防除畦の土塊発生量は、防除通路に隣接しない通常畦と有意差はなく、慣行防除畦より減少する。一方、緑化いもの発生は慣行防除畦に比べて減るが、茎の倒伏、畦のひび割れなどにより通常畦よりも増える場合がある(表1)。
- 慣行防除畦の収量は茎の損傷などにより通常畦に比べ低下する。これに対して、改良防除畦は茎の損傷が少なく(データ省略)、上いも1個重と規格内いも数が増加することが多い(表1)。通常畦に比べ、慣行防除畦は減収し、改良防除畦は多収となることから、改良体系の圃場全体の収量は畦数が減っても慣行体系と同等となる(表2)。
- 防除畦の改良により、改良防除畦では慣行防除畦に比べて速い作業速度で収穫が行われ(データ省略)収穫畦数も減少するため、収穫時の投下労働時間は10%減る。種いも準備に関わる投下労働時間も8%削減されることから、バレイショ生産の投下労働時間は防除畦の改良により約6%減少する(表3)。
- 現地生産農家における生産費を基に経営面での効果を試算したところ、種苗費が畦数の減と同じく8.3%減、労働費が6%減となり、生産コストは慣行に比べて1.9%の減と見積もられる(データ省略)。
- 改良体系において追加される防除通路作成は、畦間カルチ等の既存の除草機を活用して均すとその後の作業が安定する。同様に追加される防除通路での除草に関しては、雑草発生が軽微であり、発生が認められた場合も慣行防除同様に茎葉処理剤の畦間処理で処理が可能である。以上のように、改良体系においても従来の機械体系でバレイショ生産が可能である。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 北海道内農協(十勝地域、オホーツク地域などの北海道内畑作地域)。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 北海道内現地100ha以上。
- その他 : 2022年度の北海道農業試験会議において指導参考成果として採択。
具体的データ

その他
- 予算区分 : SIP
- 研究期間 : 2018~2022年度
- 研究担当者 : 朱里勇治、辻博之、津田昌吾、藤田直聡
- 発表論文等 :
- 辻ら(2024)バレイショの防除畦が土塊の発生,緑化いもの発生,収量に及ぼす影響 農作業研究 59(1):3-14