雌穂利用も可能な高雌穂収量サイレージ用トウモロコシ品種「トレイヤ」

要約

「トレイヤ」(旧系統名北交97号)は、北海道の熟期における早晩性が"早生の晩"で、すす紋病抵抗性、ごま葉枯病抵抗性、耐倒伏性に優れる。サイレージ用としての利用のほか、道央での雌穂収量が高く、濃厚飼料利用が可能である。

  • キーワード : トウモロコシ、サイレージ、濃厚飼料、品種、倒伏
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・自給飼料生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、濃厚飼料価格が高騰し、自給飼料増産の機運が高まっている。特に、高栄養で多収な自給飼料である飼料用トウモロコシの重要性はますます高まっている。飼料用トウモロコシは、ホールクロップサイレージなど粗飼料としての利用以外に、雌穂または子実のみを利用する濃厚飼料用としての利用も全国的に急拡大している。その一方で、栽培上のリスクでもある台風による倒伏被害や、重要な葉枯性病害であるすす紋病に加えて、本州など温暖地の主要病害であるごま葉枯病の被害が北海道内で増加している。そこで、粗飼料用としてだけではなく、濃厚飼料用としても利用可能な高い雌穂収量を持ち、耐倒伏性が強く、すす紋病、ごま葉枯病に強い飼料用トウモロコシ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「トレイヤ」(写真1、2)は、「Ho123」×「Ho126」(「Ho123」:北海道農業研究センター育成のデント系列自殖系統、「Ho126」:北海道農業研究センター育成のフリント系列自殖系統)の単交雑一代雑種である。
  • 絹糸抽出期は"早生の晩"の標準品種「KD418」より2日早い。雌穂乾物率は「KD418」より高く、総体乾物率は「KD418」と同程度(表1)。
  • 発芽期は「KD418」より2日早く、初期生育は良い(表1)。
  • 稈長、着雌穂高は「KD418」より低い(表1)。
  • サイレージ利用適地での乾雌穂重は「KD418」より高く、乾物総重は「KD418」より低い。乾雌穂重割合は「KD418」より高い。推定TDN 収量は、「KD418」よりやや低い。子実利用適地での完熟子実収量は「KD418」比116% で、多収である(表1)。
  • 耐倒伏性は「KD418」より強い(表1)。
  • 特性検定試験におけるすす紋病抵抗性は "強"であり、ごま葉枯病抵抗性は「KD418」より強い。赤かび病抵抗性も、接種検定の発病面積率が「KD418」より低い(表2)。根腐病の病徴発現は極軽微(表1)。

成果の活用面・留意点

  • サイレージ利用適地は北海道の道央北部、十勝中部、網走内陸、子実利用適地は北海道の道央中部以南および道南である。
  • 種子の市販開始は2027年以降を予定。

具体的データ

写真1 「トレイヤ」の草姿,写真2 「トレイヤ」の雌穂,表1 適地における特性概要,表2 トレイヤの病害抵抗性

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究の推進:子実用とうもろこし(国産濃厚飼料)の安定多収生産技術の開発)
  • 研究期間 : 2016~2022年度
  • 研究担当者 : 黄川田智洋、佐藤尚、藤原崚
  • 発表論文等 : 黄川田ら「トレイヤ」 品種登録出願公表第36881号(2023年9月25日)