空撮画像を利用した飼料作物の草勢評価および葉枯れ性病害評価に有効な植生指標rG

要約

飼料作物の育種試験圃場をUAVに搭載したRGBカメラで空撮した画像から得られる植生指標rGは、育種家が従来の手法で主観的に評価する草勢および葉枯れ性病害の育種家評点と相関が高く、実用的な評価指標として利用できる。

  • キーワード : スマート育種、飼料作物、植生指標、UAV、HojoLook
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・自給飼料生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

輸入飼料の高騰を受け、国内における自給飼料増産の機運が高まっている。その自給飼料生産を拡大していくにあたっては、より高品質、高能力の飼料作物品種の育成が急務である。優良品種育成のための優良個体の選抜は、計測形質と、評点による評価形質を総合的に判断して育種家が選抜している。経験を積んだ育種家であれば、評点による評価形質である越冬性や罹病程度等の視覚情報に基づく評価も安定した評価が可能であるが、経験の浅い育種家では評価の安定性はやや下がる。そのため、優良品種の育成に成功するか否かは育種家個人の選抜能力に大きく依存している。また、選抜対象個体数が多いほど、優良個体が選ばれる可能性が高くなるが、育種家が評価できる個体数には限界がある。そのため、客観的かつ効率的に多個体を同時に評価できる画像解析法により評価する手法が有効である。画像解析法を利用したrG評価法は、画像解析の知識・技術がなくてもrG評価値を出力できるアプリケーション「HojoLook」が開発されたことにより導入が容易となり、育種現場での有効利用が期待されている。本研究では、熟練の育種家が評価した飼料作物の葉枯れ性病害、草勢、冬枯れ(越冬後の葉枯れ程度)の育種家評価値とrGの比較検証を行い、rG評価法の実用性について明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 植生指標rG評価法はドローンによって空撮された圃場画像を、画像解析ソフトによって解析対象画像に切り分け、画像内の緑の多さを表す指標Green Red Vegetation Index ((緑-赤)/(緑+赤))を相対値(範囲0~100)に出力する方法である。
  • 北海道農業研究センター(札幌)圃場における、オーチャードグラス、ペレニアルライグラス、フェストロリウム、チモシーの葉枯れ性病害の罹病程度36データの育種家評点と、評価時に撮影した画像から算出したrGの相関係数(R)の平均値は、-0.707と高い (表1) 。
  • 同圃場における越冬性評価(越冬後再生程度や雪腐病罹病程度などの総合評価)において、ペレニアルライグラスとフェストロリウムではR平均値は高い。解析範囲内に植物個体が占める割合が小さい場合、画像内での植物の持つ緑色の影響が小さくなるためrGのブレが大きくなり、Rは低くなる(例:オーチャードグラス越冬性評価、表1)。
  • エンバク、イタリアンライグラス、アカクローバ、ペレニアルライグラスの草勢や冬枯れ(越冬後の葉枯れ程度)の評点とrGのRは概ね高い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 飼料作物の葉枯れ性病害評価、草勢評価、再生程度の評価に利用できる。
  • 越冬性評価では、越冬直後で再生個体が小さすぎる時期には解析範囲内の植物個体が占める割合が小さすぎるためにrGのブレが大きくなることから、育種家が従来法で安定した越冬性評価ができる程度に再生した時期に行うことが望ましい。
  • 草勢評価において隣の個体と葉が重なる状況や、雑草が繁茂して地表が覆われてしまった状況では、評価ができない。
  • 空撮は光の反射による影響を避けるために、晴天よりは曇天の撮影が望ましい。また、早朝や夕方は、影が隣の個体へかかることがあるため,避ける。

具体的データ

図1 rGによる評価の例,表1 育種家評点とrGの相関係数の平均値,表2 飼料作物の冬枯れ、草勢、再生程度の評価値とrGの相関係数

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2017~2021年度
  • 研究担当者 : 黄川田智洋、依田悠希(長岡科学技術大学)、藤原崚、眞田康治、佐藤広子、佐藤尚、上床修弘、荒川明、髙井智之、清多佳子、内山和宏、高原美規(長岡科学技術大学)、春日重光(信州大学)、秋山征夫
  • 発表論文等 : 黄川田智洋ら(2022)育種学会誌、24:134-145