要約
年3回刈りのアルファルファ(AL)とオーチャードグラス(OG)を番草ごとに異なる割合で混合してサイレージ調製を行うと、1番草ではOGの混合割合が増える程サイレージの発酵品質は改善される。一方で、2、3番草ではOGの混合割合にかかわらずサイレージ発酵は進みにくい。
- キーワード : アルファルファ、オーチャードグラス、年3回刈り、発酵品質、牧草サイレージ
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・乳牛飼養グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
マメ科牧草のALは自給可能な高タンパク質飼料として期待されるが、可溶性炭水化物(WSC)含量が低く、緩衝能が高い。このことから、サイレージ発酵過程においてpHの低下や乳酸発酵が進みにくい等不良発酵が懸念されており、発酵品質を改善する技術が求められている。一方で、我が国で主たるイネ科牧草の一つであるOGはALと比べ粗タンパク質(CP)含量が低いものの、WSC含量は高く、緩衝能は低いため、良好な発酵品質のサイレージを調製しやすい。したがって、ALをOGと混合してサイレージ調製を行うことで、高タンパク質飼料であるALの利点を活かした上で発酵品質の改善が期待される。ALとOGは広く混播利用されているが、いずれも再生力が強く、刈り遅れると栄養価や嗜好性が低下することから、1番草はALが着蕾期の時期に、2番草以降は40-50日程度の短間隔で年3回以上の刈り取りが推奨されている。収量や栄養価の向上を企図して前述した年3回刈り体系で収穫した場合でも、ALにOGを混合することで全ての番草においてサイレージの発酵品質が改善される可能性がある。
そこで、本研究では、それぞれ単播草地において年3回刈り体系で収穫したALとOGの混合がサイレージ発酵に及ぼす影響についての調査により、OGの混合による発酵品質改善効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 1番草はAL(「ハルワカバ」)を着蕾期、OG(「ハルジマン」)を出穂期に、2、3番草はその後40-50日間隔で刈り取りを行い(刈り取り日は同日)、5段階の異なる新鮮物重比(AL:OG=100:0、70:30、50:50、30:70、0:100)で混合後、2cm程度に細断し、24時間程度予乾した材料草は、全番草ともOGの混合割合が増える程CP含量および緩衝能は減少し、WSC含量は増加する(図1)。また、両草種とも2、3番草に比べ1番草でWSC含量が高い(図1)。
- 材料草をプラスチックフィルムに詰め、90日間貯蔵後に開封したサイレージは、1番草ではOGの混合割合が増える程乳酸含量は増加し、pHは低下する等、発酵品質が改善される(図2)。
- 2、3番草ではOGの混合割合にかかわらず乳酸含量の増加やpHの低下は十分でなく、サイレージ発酵は進みにくい(図2)。
成果の活用面・留意点
- 年3回刈りで収穫したALとOGを混合してサイレージ調製する場合の基礎的知見となる。
- 牧草の品種(高WSC含量品種の利用等)やサイレージの調製方法(添加剤の利用等)によっては2、3番草においても発酵品質が改善される可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 矢島昂、宮地慎
- 発表論文等 : 矢島、宮地(2024)日草誌、70(1):22-27