要約
牛群条件や経営耕地面積、使用飼料等の各種前提条件を入力することで、経営全体で最も低コストな飼料設計メニューと自給飼料作付け計画を同時に計算する搾乳牛向け飼料設計支援プログラムである。新規飼料作物及び新規飼料素材の導入に向けた事前評価に利用できる。
- キーワード : 飼料設計、自給飼料、搾乳牛、日本飼養標準乳牛2017、python
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・乳牛飼養グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
乳牛の飼料設計では、必要栄養分を満たしつつ、飼料費を低減させる飼料の組み合わせの探索が重要であり、数理計画法を用いた最小費用飼料設計は有効な手段の一つである。しかし、従来の飼料設計プログラムでは、設計に用いる自給飼料について経営耕地の制約に起因する給与可能量が考慮されていない。そこで、牛群条件や使用飼料の栄養価・単価の他、経営耕地面積や自給飼料の単収条件等を与えることで、経営全体で飼料費が最小となる自給飼料作付け構成及び飼料設計メニューを同時決定する搾乳牛向け飼料設計支援プログラムを開発する。
成果の内容・特徴
- 本プログラムは、搾乳牛の牛群条件・目標乳量、使用飼料群の栄養価、単価、単収、経営耕地面積、自給飼料生産における耕地競合及び刈取回数を前提条件として入力することで、搾乳牛の必要栄養分を内部で計算し(日本飼養標準乳牛2017準拠)、これを満たす経営全体で最も費用の小さい飼料設計メニューと自給飼料作付け構成を同時に計算する(図1)。
- 計算に必要な前提条件は所定のフォーマットでExcelファイル(init.xlsx)のシートに記述し(図2)、プログラム本体と同じフォルダに配置することで、自動で読み取られる。
- コマンドプロンプト等から実行コマンドを入力すると、同じフォルダに配置された前提条件の記述されたinit.xlsxを読み取り、最適解における飼料費、自給飼料作付け構成、搾乳牛給与メニューを計算・表示する。
- 表1の飼料設定に基づく実行例を表2に示す。試算1では経営条件を搾乳牛100頭、経営耕地面積4,000aとしており、トウモロコシWCSとチモシー(2回刈り)を選択可能にしている。そこにECS(イアコーンサイレージ)を自給飼料として選択可能にしたものが試算2であるが、最適解ではECSが選択されない。そこで試算2から経営耕地面積を5,000aに拡大し、再度計算を行うと最適解においてECSの生産と給与が選択される。このように本プログラムでは、経営条件に応じた最適な自給飼料作付け構成と飼料設計メニューを同時に計算できる。
成果の活用面・留意点
- 新たな飼料生産体系や新規飼料素材の導入に向けた事前評価に活用できる。
- 行政及び普及機関における現場指導員等を主なユーザーとして想定する。
- プログラムの実行にはpython3.11の他、関連ライブラリを導入する必要がある。
- 本プログラムは繊維の機能性や蛋白質の分解性等は配慮していない。利用に際しては日本飼養標準乳牛5章「飼料給与上注意すべき事項」等を参照されたい。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 西村和志
- 発表論文等 :
- 西村和志(2022)職務作成プログラム「搾乳牛向け飼料設計支援プログラム」、機構-K36
- 西村和志、特願(2022年10月28日)