ドローン空撮画像のAI解析技術を活用したスイートコーン収穫適期予測技術

要約

スイートコーン圃場でのドローン空撮画像のAI(人工知能)による物体検出技術と農研機構メッシュ農業気象データにより、圃場1筆単位で収穫適期を予測する技術である。開花期前後に1度だけ圃場を空撮することで収穫約1か月前に収穫適期を把握することができる。

  • キーワード : スイートコーン、空撮画像、ドローン、物体検出、AI
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地野菜水田作研究領域・野菜水田複合経営グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

スイートコーンは収穫後の品質低下が著しい作物としても知られており、計画的な収穫作業が望まれている。現在、生産者は広大な圃場のごく一部のサンプルから収穫適期を判断せざるを得ないため、正確な収穫適期判断ができず計画的な収穫作業を行うことは困難である。そこで、ドローンを使用して圃場を均一に空撮することで圃場全域の生育状況を画像で取得し、AIによる物体検出技術と、農研機構メッシュ農業気象データを活用してスイートコーンの収穫適期を予測する技術を開発する。本技術により、将来的に収穫作業の機械化による省力化・一斉機械収穫時の歩留まり向上が期待されるため、スイートコーン生産の効率化に寄与できる。

成果の内容・特徴

  • 本技術は、収穫約1か月前の雄穂抽出期から絹糸抽出期にあたる圃場においてドローン空撮を1度だけ行うことで収穫適期が予測できるもので、①ドローン空撮画像から雄穂検出AIで開花段階を推定することで圃場の生育状況を解析する「開花段階推定ステップ」、②前ステップの結果から絹糸抽出日を予測する「絹糸抽出日予測ステップ」、③農研機構メッシュ農業気象データを利用して収穫適期を算出する「収穫適期予測ステップ」で構成される(図1)。本技術に基づく、収穫適期予測ツールは、圃場の空撮画像・圃場の位置情報・品種を入力することで約5日間の幅で収穫適期を出力する。
  • ステップ①で利用する雄穂検出AIは、スイートコーンの雄穂抽出期から絹糸抽出期の時期に撮影したドローン空撮画像中の雄穂の色調から「未開花」「開花前期」「開花後期」に分類する、YOLOv5を利用した物体検出AIである(図2)。高度約3mで撮影された画像からAIの精度指標のひとつであるmean Average Precisionを算出したところ、リサイズ後の画像長辺サイズ640 pixel、1080 pixelでそれぞれ0.67、0.71であることから、雄穂検出AIは圃場の生育状況を高精度で解析できる(表1)。
  • ステップ①の結果から、ステップ②では式1で求まる定数Giを求める。さらに、求めたGiから予測絹糸抽出日を算出する。
    Gi=(開花後期雄穂数-未開花雄穂数)/検出雄穂総数・・・式1
  • ステップ③で収穫適期は品種毎に②の絹糸抽出日を起点とした積算気温により推定する。
  • 本技術で収穫適期を予測し、実際の収穫日と比較したところ、予測収穫適期と実際の収穫日が重複した正解事例は所内で88.2 %、北海道胆振管内の現地圃場で62.5 %で予測できている(表2)。

成果の活用面・留意点

  • ドローン空撮により圃場全体の画像を取得することで、圃場全体の生育状況を反映した収穫適期を出力できる。
  • 圃場全体の生育を反映した空撮画像を入力するため、1haあたり100-200枚を目安に撮像する。画像長辺が約8mとなるような高度・画角を目安とし、本試験での取得画像サイズは3840×2160ピクセルである。なお、正確な雄穂検出のため、白飛びやブレのある写真を予め除く。
  • 本試験は、北海道農業研究センター(札幌市)(品種「恵味スター」)ならびに北海道胆振管内現地圃場(品種「ハニーバンタム20」)で行った。他の場所・品種では確認が必要である。
  • 開発した収穫適期予測ツールは、農研機構メッシュ農業気象データ(The Agro-Meteorological Grid Square Data, NARO)を利用している。

具体的データ

図1 収穫適期予測技術の概要,図2 雄穂検出例。赤色矩形(nf)は未開花、ピンク色矩形(ef)は開花前期、オレンジ色矩形(lf)は開花後期を示す,表1 雄穂検出AIの検出精度,表2 収穫適期予測結果

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2021~2023年度
  • 研究担当者 : 大澤央、齋藤正博、長南友也、林怜史、八木岡敦、北岡哲、中村卓司
  • 発表論文等 :
    • 大澤ら、特願(2023年6月14日)
    • 大澤ら(2023)職務作成プログラム「スイートコーン収穫適期予測ツール」、機構-K40
    • 大澤ら(2024)農業食料工学会誌、86(1):39-43