栽培限界地帯でも安定して登熟する超極早生サイレージ用トウモロコシ品種「ハヤミノルド」

要約

「ハヤミノルド」は、早晩性が"早生の早"の中でもかなり早い"超極早生"で、寒地のトウモロコシ栽培限界地帯においても十分に雌穂の登熟が進む。すす紋病抵抗性、ごま葉枯病抵抗性、耐倒伏性に優れる。また、赤かび病抵抗性は既存品種より強い。北海道の根釧、道北地域に適する。

  • キーワード : トウモロコシ、サイレージ、品種、極早生、倒伏
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・自給飼料生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

近年の濃厚飼料価格の高騰もあり、高栄養で多収な自給粗飼料であるサイレージ用トウモロコシの重要性はますます高まっている。とくに、草地酪農地帯である北海道の根釧および道北地域は、積算気温の少なさから従来の品種では十分な登熟に達することができないことがある栽培限界地帯であり、より早生で、登熟の早い品種が求められている。また、台風の北海道への襲来による倒伏被害や、これまで北海道において重要な葉枯性病害であるすす紋病に加えて、本州など温暖地で発生する主要病害であるごま葉枯病の道内での被害が増加している。さらに飼料中のかび毒の原因となる赤かび病の抵抗性についても向上が求められている。そこで、これまでの"早生の早"の品種よりもかなり早い熟期で、耐倒伏性が強く、すす紋病、ごま葉枯病、赤かび病に強い品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ハヤミノルド」(写真1、2)は、Ho120×Ho131の単交雑一代雑種である。
  • 絹糸抽出期は「KD254」より7日早く、雌穂登熟も早い。雌穂乾物率は非常に高く、総体乾物率も高い。早晩性はこれまでの北海道での熟期の"早生の早"の品種よりもかなり早く、既存の品種の中で最も早い"超極早生"である(表1)。RMは60日クラスである。
  • 発芽期は「KD254」とほぼ同日で、初期生育は良い(表1)。
  • 稈長、着雌穂高は「KD254」より低い(表1)。
  • 早晩性が「KD254」よりかなり早いため、乾物総重および推定TDN収量は「KD254」より低い。乾雌穂重割合、乾物中推定TDN割合は「KD254」並である(表1)。
  • 耐倒伏性は「KD254」より強い(表1)。
  • 密植適性は高く、926本/aの栽植密度でも「KD254」や「たちぴりか」と同様に標準密度(772本/a)比で10%程度の増収が見込まれる(表1)。
  • 特性検定試験におけるすす紋病抵抗性は強く"かなり強"であり、ごま葉枯病抵抗性は強い。各試験地でのすす紋病およびごま葉枯病罹病程度は低い。総合的に判断して、すす紋病抵抗性はかなり強く、ごま葉枯れ病抵抗性は強い。根腐病の病徴発現はやや低い。赤かび病接種検定の発病面積率は低い(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 酪農、畜産、畑作、水田などの農家・法人、コントラクター等の飼料生産組織。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 北海道の飼料用トウモロコシ作付地域800ha。
  • その他 : 2025年より民間種苗会社から種子が販売される。

具体的データ

写真1 ハヤミノルドの草姿,写真2 ハヤミノルドの雌穂,表1 適地における特性概要,表2 ハヤミノルドの病害抵抗性

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発:栄養収量の高い国産飼料の低コスト生産・利用技術の開発)
  • 研究期間 : 2014~2020年度
  • 研究担当者 : 黄川田智洋、佐藤尚、林拓(道総研酪農試)、牧野司(道総研酪農試)、秋山雄希(道総研酪農試)
  • 発表論文等 : 黄川田ら「ハヤミノルド」 品種登録第29298号(2022年7月11日)