精密農業研究に用いる低コストで高精度な測位ができるNTRIPベースRTK-GNSS基地局

要約

Raspberry Pi 4サーバとSIMカードを用いたRTK-GNSS基地局を開発した。市販のGNSSモジュールとオープンソースで構築しており、複数デバイスを同時に接続することができる。設置コストは約10万円であり、既存サービスより低コストで運用でき、測位精度も同等である。

  • キーワード : RTK-GNSS基地局、精密農業、高精度衛星測位、複数接続
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地畑作研究領域・スマート畑作グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

精密農業の遂行には全地球航法衛星システム(GNSS)データをRTK(Real-time kinematic)データを用いた補正を行うことが不可欠である。通常、RTK-GNSS補正情報は付近の基地局から提供され、料金を支払うことで一定期間利用できるが、一般的に1契約当たり1デバイスしか接続することができず、複数台のトラクタを使った協調作業や、トラクタとUAVの協調作業のように同時に複数デバイスで補正情報を使う場合は、複数の契約が必要となりコストが高くなることが問題となる。そこで、IPアドレス付きのLTE SIMカードを搭載し、複数のクライアントに同時にRTK-GNSS補正情報を送信可能な基地局を開発し、一般的に利用されている商用 GNSS補正情報配信サービスによる補正情報と比較し、開発した基地局の精度が既存のサービスと同等以上であることを示す。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、GNSS情報を受信するアンテナHX-CSX601A(Harxon Corp)、GNSSモジュール(ZED-F9P GNSSモジュール)、Raspberry Pi 4と4GPiモジュールを用いたNTRIPサーバおよび監視用の小型ディスプレイで構成される(図1)。NTRIPクライアントへの送信は、Raspberry Pi 4に搭載された通信モジュールを用いLTE SIMカードによるインターネット通信で行う(図2)。衛星システムは、QZSS、GPS、BeiDou、GLONAS、Galileoの各サービスに対応している。
  • 本システムは、オープンソースを用いたNTRIPキャスタを備えており、4G通信により複数のクライアント対してRTCMデータを更新レート1秒でストリーミングできる(図3)。
  • 広く利用されている商用GNSS補正情報配信サービスと開発した基地局との精度の比較を行った。両者で単一地点を96時間連続して測位を続けた結果、水平方向の変動は既存サービスが9.2±5.8mmであるのに対して、開発した基地局は7.2±4.5mmであることから、開発した基地局の精度は既存サービスの精度と同等以上である(図4)。高度の変動についても、標準偏差は既存サービスが19.8mmであるのに対して、開発した基地局は11.5mmと同じく同等以上の精度である。
  • 本システムは約10万円で制作することができるため、複数年にわたり複数のデバイスを接続するような運用を行う場合では、一般的な商用サービス(年間利用料は20,000~30,000円程度)と比較すると安価に運用することができる。

成果の活用面・留意点

  • 試験圃場等においてRTK-GNSSを利用する複数のデバイスを複数年、(試験研究用に)運用する場合などの基地局として活用できる。なお、運用実績のある機器には、RTK-GNSSシステムを搭載したトラクタ:クボタMR1000、UAV:RTKマルチローターUAVのDJI P4 Multispectral(SZ DJI Technology Co., Ltd)と、固定翼UAVのeBee X(AgEagle Aerial Systems, Inc., USA)などがあり、10台までの同時接続を確認済みである。
  • 本基地局は、研究目的に設置するものである。
  • RTK-GNSSデバイスのRTCM要件に応じてカスタマイズが可能である。
  • 本基地局は設置後4年間の稼働を確認済みであり、設置場所から約50km離れた生産者圃場において利用可能であることを確認済である。
  • セキュリティーのため、設置時に公開ポートを使用せず、マウンティングポイントにパスワードを設定することで接続クライアントを制御する。
  • LTE SIMカードの通信には、別途費用が発生する。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2021~2024年度
  • 研究担当者 : Njane Stephen Njehia、伊藤淳士、吉田光希、土屋史紀
  • 発表論文等 : Stephen N. N. (2024) Eng. in Agric., Env. and Food. 17:74-81