要約
高水分乳牛ふん堆肥の堆積物中にスノコ状構造物を導入することで、れき汁の分離と堆積物内部の通気性を改善する堆肥化手法である。スノコ状構造物の導入により、55°C以上持続時間が増加し、含水率の低下した腐熟の進んだ堆肥の生産が可能になる。
- キーワード : 乳牛ふん、高水分堆肥材料、通気性、スノコ状構造物、れき汁
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・自給飼料生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
乳牛ふんは含水率が高いため、水分調整に必要な副資材を充分に確保できない地域においては、含水率が高いままでの堆肥化処理を余儀なくされている。高水分堆肥材料の堆肥化処理は温度が上昇しにくく、雑草種子の死滅に必要な高温の保持が困難であること、加えて腐熟が不十分で悪臭が強いなどの問題があることから、低コストで堆肥品質の向上を実現できる技術の開発が求められている。
そこで本研究では、高水分堆肥材料の堆積物の底部にスノコ状構造物を導入することで面状の内部空間を創出し、堆肥からの滲出液であるれき汁の分離、および嫌気的になりやすい底部の通気性を改善することで、堆肥温度、有機物分解、および含水率に対する影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本堆肥化手法は、スチール製角パイプ枠にエキスパンドメタルを溶接したスノコ状構造物(図1a)、およびスノコ状構造物内部に蓄積したれき汁の排出と、スノコ状構造物の内部空間と外気のガス交換を可能にする塩ビ管で構成される(図1b)。初発時の堆積物の形状や体積を区間で統一するため、対照区にはスノコ状構造物の代わりにスチール製角パイプ枠に平板を溶接し、内部空間に発泡スチロールを充填した構造物を導入している。堆肥の有機物分解に伴って堆積物の体積が徐々に減少するため、堆肥の切り返し後は堆積物の幅、高さは一定とし、奥行きを短くすることで再堆積を実施している。
- [スノコ-中央-40cm]の凡例で示されるスノコ状構造物の直上を除き、堆肥温度を測定した初発時の堆積物の中央および後方部の下から40および80cmの部位においては、期間を通じて対照区よりもスノコ状構造物を導入したスノコ区の堆肥温度が高い傾向にある(図2)。スノコ区においては堆肥内部の温められた空気が上昇する際に、塩ビ管から外気が堆肥内部に導入されることで酸素供給量が増加し、温度上昇が促進されたと考えられる。
- 堆積物の各部位の最高温度および55°C以上持続時間はいずれもスノコ区の方が高い(図3)。雑草種子の死滅に効果がある55°C以上持続時間は部位によっては2倍以上の差が認められる。
- 有機物分解割合および易分解性有機物量の指標である生物化学的酸素要求量の比較から、スノコ区において有機物分解の促進が認められる(表1)。スノコ状構造物の導入は有機物分解が進んだ、含水率の低い堆肥の生産に貢献する。
成果の活用面・留意点
- スノコ状構造物を導入により温度上昇や有機物分解効果の向上が認められるが、スノコ状構造物の存在はホイールローダーなどの重機による切り返し作業の障害となる。実用化の場面では、切り返し作業の支障にならないような構造物の形状や施設への組み込みなどの工夫が必要になる。
- 乳牛ふんがスノコに付着することで開口部の目詰まりが起こり、通気性が低下する。堆積時にスノコ上面に麦稈を敷くなど、ふんが直接スノコの開口部に触れないような処置、または定期的な掃除などの対策が必要となる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2020~2023年度
- 研究担当者 : 花島大
- 発表論文等 : Hanajima D. (2024) Animal Science Journal 95:e13949