要約
放牧飼養下でエネルギーが不足している泌乳牛は、充足している個体と比較して20秒スケールで評価された採食持続時間および採食時の移動距離が有意に増加する。これらの行動的特徴は、放牧飼養下における泌乳牛のエネルギー状態の把握に有効である。
- キーワード : 移動距離、エネルギー不足、採食行動、泌乳牛、放牧
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・乳牛飼養グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
乳牛の放牧飼養は、放牧地での採食量の把握が困難であるため、補助飼料の適切な給与等による個体管理の実現が未だ課題となっている。そのため、省力的に放牧泌乳牛の個体毎のエネルギー状態を把握できる技術が求められている。近年では、GPSや活動量計などのウェアラブルデバイスを用いることで、個体毎の行動データを、長期間、高頻度かつ高精度に収集することが可能になりつつある。さらに乳牛の採食行動は、個体の空腹レベルやエネルギーバランスを反映することが示されてきたものの、放牧地における数秒~十数秒単位で繰り返される採食行動とエネルギー状態の関係については明らかにされていない。より短い時間スケールでの採食行動とエネルギー状態の関係性が解明されれば、短期間のモニタリングによってエネルギー状態の把握が可能となる。そこで本研究では、放牧飼養下において発生する可能性があるエネルギー不足個体を試験的に設定し、ウェアラブルデバイスを用いて放牧泌乳牛の行動データを収集し、エネルギー不足個体が放牧地における20秒スケールの採食行動に示す特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 解析には20秒間隔で記録したGPSロガーと活動量計のデータを用いる。1日21時間の昼夜放牧とし、牛舎内での補助飼料給与量により設定した、エネルギー充足区(TDN充足率110%)および不足区(TDN充足率80%)の各4頭からなる計8頭の牛群からデータを収集する。
- 20秒ごとに、活動量計の値から行動を「採食」または「非採食」に判別し、GPSロガーから得られた位置情報を用いて20秒間の移動距離を算出する。
- 活動量計によって20秒ごとに記録された「採食」行動の連続性および移動距離について比較した結果、エネルギー不足個体は、充足個体よりも「採食」行動が継続する時間(図1)および「採食」行動を継続している間の移動距離(図2)が長い。
- エネルギー不足による行動的特徴の確認には必ずしも1日を通したモニタリングが必要ではなく、採食行動を継続する時間では昼間または夜間、採食行動を継続している間の移動距離では昼間のみのモニタリングによって行動的特徴が確認できる(図1、図2)。
成果の活用面・留意点
- 放牧飼養下における泌乳牛のエネルギー状態を把握するための基礎的データとして活用できる。
- 対象とする泌乳牛の体重・乳量・分娩後日数および利用する放牧地の面積・草種・草量によっても採食行動は影響を受けるため、これらの要因との交互作用についてはさらなる研究が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2019~2021年度
- 研究担当者 : 篠田優香、朝隈貞樹、上田靖子、須藤賢司
- 発表論文等 : 篠田ら(2024)日草誌、70:125-134