要約
「イコロ」は、晩生で「パイカル」に比べて道東の土壌凍結地帯における越冬性に優れる。水溶性炭水化物含量が2.2ポイント高く、可消化養分総量含量が1.2ポイント高く、飼料品質が優れる。採草利用では1番草が「パイカル」に比べてやや多収で、すじ葉枯病に対する耐病性は優れる。
- キーワード : オーチャードグラス、晩生、越冬性、飼料品質
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・自給飼料生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
北海道の基幹イネ科牧草であるオーチャードグラスは、耐暑性など環境ストレスに対する耐性に優れるとともに、地下茎型イネ科雑草との競合力に優れるが、越冬性と飼料品質が他のイネ科牧草などに比べて劣る場合がある。本研究では、オーチャードグラスの越冬性を改良するとともに、飼料品質については家畜の消化性およびサイレージの発酵品質と関連がある水溶性炭水化物(WSC)を改良し、オーチャードグラスの主力である晩生について高品質で越冬性に優れる品種の育成を目的とする。
成果の内容・特徴
- 「イコロ」は、ホクレン訓子府実証農場においてWSC含量の高い晩生20母系から越冬性に優れWSC含量の高い9母系18個体を選抜し、母系選抜法により育成した品種である。
- 出穂始日は、標準品種「パイカル」より1日遅い5月30日で、早晩性は"晩生"である(表1)。
- 3カ年合計乾物収量は、全道平均では「パイカル」比101と並である(表2)。場所別では、北見が103、十勝は104でやや多い(表2)。番草別収量では、1番草がやや多収、2番草は少なく、3番草は並である(表1)。年次別では、2年目および3年目ともに「パイカル」並である(表1)。
- 越冬性は、北農研と天北では各年ともに「パイカル」より並で、道東(酪農試、北見、畜試、十勝)では各年ともに「パイカル」より優れ、4年目は各場所ともに有意に優れる(表3)。早春の草勢は、全道平均および道東において「パイカル」より優れる(表1)。耐寒性は、"中"で「パイカル」より優れる。
- すじ葉枯病に対する耐病性は、罹病程度が「パイカル」より低いことから、優れる(表1)。
- 乾物収量(イネ科とマメ科合計)は、アカクローバ混播は「パイカル」よりやや多く、シロクローバ混播は「パイカル」並である(表1)。マメ科率は、いずれも「パイカル」と同程度である(表1)。以上のことから、マメ科牧草との混播適性は、「パイカル」並である。
- WSC含量は、年間平均で「パイカル」より2.2ポイント高い(表1)。
- 中性デタージェント繊維(NDF)含量は、年間(全番草)平均で「パイカル」より2.3ポイント低い(表1)。推定TDN(可消化養分総量)含量は、年間(全番草)平均で「パイカル」より1.2ポイント高く、年間合計の推定TDN収量(栄養収量)は「パイカル」比105でやや多い(表1)。
成果の活用面・留意点
- 栽培適地は、道東を中心とした北海道全域である。
- 採草利用を主体にして、放牧利用および採草放牧兼用にも利用できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、民間資金等(資金提供型共同研究、受託試験)
- 研究期間 : 2015~2024年度
- 研究担当者 : 眞田康治、秋山征夫、佐藤広子、田村健一、安達美江子(ホクレン)、奥村正敏(ホクレン)、岩渕慶(ホクレン)
- 発表論文等 : 眞田ら「イコロ」品種登録出願公表第38083号(2025年10月23日)