ドローンと深層学習を利用した植物の被度推定システム「CoverageDL」

要約

植物の被度推定システム「CoverageDL」は、ドローン空撮画像の利用によって圃場における植物の被度と分布、例えばイネ科牧草とマメ科牧草の混播圃場におけるマメ科牧草の被度推定およびマッピングができる。

  • キーワード : スマート農業、飼料作物、マメ科牧草被度、UAV、CoverageDL
  • 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・自給飼料生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

圃場において生育している多様な植物種の被度は、植生診断において重要な情報である。例えば、イネ科牧草とマメ科牧草の混播栽培での両者の割合は、窒素施肥量、反芻家畜の膨脹症に関連するため、非常に重要な情報として利用される。本研究では植生診断に資する植物の被度とマッピングを行うシステムの開発を目的とし、モデル植物としてアカクローバを対象とする。
ドローン空撮は、広範囲の圃場の状態を効率的かつ客観的・定量的に評価するための画像を取得できる。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルは画像認識に優れており、マメ科植物の被度推定にも有用であると考えられる。しかし、その利用において適切なアーキテクチャ(論理的構造)や学習条件(オプティマイザ、学習率など)を明らかにする必要がある。本研究では、ドローン空撮画像を利用し、効率的かつ客観的なアカクローバ被度推定のため、複数のCNNアーキテクチャ、オプティマイザ、学習率を自動的に切り替えて効率的にCNNモデルを作成できるシステム「CoverageDL」を新規開発する。さらに、本システムを用いて、高精度な被度推定に適したCNNアーキテクチャと学習条件を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 「CoverageDL」は、ドローン空撮画像より対象植物の被度を推定するため、複数のCNNアーキテクチャ、オプティマイザ、学習率を自動的に切り替えて効率的にCNNモデルを作成できる。
  • 「CoverageDL」は、空撮画像と対象植物領域を塗り分けた画像(アノテーション画像)から、同一位置の64×64ピクセルサイズの画像をランダムに切り抜き、アノテーション画像から対象植物の被度を解析し、空撮画像由来の64×64ピクセルサイズ(サイズの変更可)の画像に自動的にアノテーションを付与するため、CNNモデル作成データセットを容易に作成できる(図1)。
  • 「CoverageDL」は、全体の被度推定だけではなく、対象植物の分布状況をマッピング出来る(図2)。
  • アカクローバを対象とした場合、3つのCNNアーキテクチャ(InceptionV3、ResNet50、VGG16)間の推定精度に大きな違いはない。しかし、推定速度を考慮すると、GPU搭載PC環境下ではVGG16が適し、汎用PC環境下ではInceptionV3とResNet50が適する。
  • アカクローバを対象とした場合の学習条件は、InceptionV3ではAdam(学習率0.00001)、ResNet50ではRMSprop(学習率0.0001)。VGG16ではMomentumSGD(学習率0.001)で高い再現性と高精度を示す。なお、Adam(学習率0.00001)は、ResNet50とVGG16でも高い再現性と高精度を示す。

成果の活用面・留意点

  • アカクローバだけではなく、エゾノギシギシなどの雑草等、種々の植物AIモデルの作成が可能で、それら植物の被度推定およびマッピングが可能である。
  • 複数のAIモデルを使用すると、誤差の大きい外れ値を除外出来る可能性が高くなるが、計算コストが増加する。
  • 空撮は光の反射、植物体の影、ドローン機体の投影の影響を避けるため、曇天下での撮影が望ましい。

具体的データ

図1 CNNモデル作成データセットの作成方法,図2 推定結果の例

その他

  • 予算区分 : 科研費、交付金
  • 研究期間 : 2021~2025年度
  • 研究担当者 : 秋山征夫、藤原崚、佐藤広子、黄川田智洋、眞田康治
  • 発表論文等 :
    • 秋山征夫ら(2025)草地会誌、71:147-158
    • 藤原崚、秋山征夫(2022)職務作成プログラム「被度推定AIモデル作成プログラム」、機構-K28