要約
1番草刈り取り後の再生期間を短縮させ収穫調製することでオーチャードグラス2番草サイレージの繊維消化性は高まり、乳牛に給与すると採食量および乳生産量は向上する。オーチャードグラス2番草にとって再生期間の短縮は、飼料利用性や乳生産性の向上に有効な刈り取り手段である。
- キーワード : オーチャードグラス、2番草、刈り取り戦略、乳生産
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地酪農研究領域・乳牛飼養グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
寒冷地の基幹牧草種の一つであるオーチャードグラスは、採草利用では年3回以上の収穫を行い、2番草以降の再生草の収量割合は年間収量の半分を超える。再生草の中でも特に2番草は収量が高く、泌乳牛への利用も求められる。一方2番草は、生育時期が高温となり繊維成分の消化性が低下するため、乳牛へ給与する際、低繊維消化性に起因した採食量や乳生産の低下が危惧される。そのため2番草生育期間の積算温度を抑え、2番草の飼料利用性や乳生産性を向上させる有効な刈り取り手段が求められている。
そこで、本研究ではオーチャードグラス2番草の再生(生育)期間および1番草の刈り取り時期が2番草サイレージの飼料特性および乳牛へ給与した際の採食量、乳生産に及ぼす影響を検証することにより、飼料利用性や乳生産性に有効な刈り取り手段を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 供試した牧草サイレージは、刈り取り体系の異なるオーチャードグラスの単播草地から収穫調製した3種類の2番草サイレージである(E7w、E6wおよびH7w)。すなわち1番草を出穂始めに刈りその7週後(E7w)あるいは6週後(E6w)、もしくは1番草を出穂期(出穂始めの10日後)に刈りその7週後(H7w)に収穫調製をしたものである(図1)。2番草の再生期間の比較としてE7wとE6w、1番草の刈り取り時期の比較としてE7wとH7wを比較する。2番草生育期間の有効積算温度(5°C以上)は、E7wで666°C、E6wで531°C、H7wで702°Cである。
- 2番草サイレージの飼料成分は処理間で大きな差はないものの、E6wで難消化性繊維(iNDF)が低く、中性デタージェント繊維(NDF)の第一胃内有効分解度が高い(表1)。
- 乳牛の飼養成績を検証するために調製した3種類のTMRの飼料構成(E7w区、E6w区およびH7w区)は、各2番草サイレージの混合率を乾物ベースで30%とし、その他原料については同一設定である(表2)。
- E7w区に比べE6w区では、乳牛の繊維消化率が高く、採食量および乳生産量も高い。一方、E7w区とH7w区には消化率、飼養成績に差は認められない(表3)。
- 1番草の刈り取り時期は、2番草の生育期間の積算温度に影響するもののその差は小さく、2番草の飼料特性や給与した際の乳牛の飼養成績に及ぼす影響は小さい。一方再生期間の短縮は、2番草の生育期間の積算温度を低下させ、2番草サイレージの繊維消化性を高める。さらに乳牛に給与した際、採食量や乳生産を増加させる。オーチャードグラス2番草にとって再生期間の短縮は、飼料利用性や乳生産性の向上に有効な刈り取り手段である。
成果の活用面・留意点
- オーチャードグラス(えさじまん)の再生草利用に関する基礎的データとして活用できる。
- 供試したオーチャードグラス2番草の乾物収量はE7wで4.34、E6wで3.78、H7wで3.67t/haであり、再生期間の短縮により乾物収量が低下する可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、民間資金等(日本中央競馬会畜産振興事業)
- 研究期間 : 2021~2025年度
- 研究担当者 : 宮地慎、八木隆徳、矢島昂
- 発表論文等 : Miyaji M. et al. (2024) Anim. Sci. J. 95:e13976
doi.org/10.1111/asj.13976