要約
北海道のカボチャ産地において、開発したドローンによるうどんこ病AI診断は2ha圃場を30分弱で診断完了し、高精度に病斑を判定する。ドローン防除はつる枯病にも効果があり、防除作業時間はブームスプレーヤより26%短縮され、土壌がぬかるむ条件でも適期散布可能性が高まる。
- キーワード : カボチャ、農薬散布、ドローン、うどんこ病、つる枯病、AI診断
- 担当 : 北海道農業研究センター・寒地野菜水田作研究領域・野菜水田複合経営グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
北海道は全国のカボチャ生産量の過半数を占めるが、近年、収量を低下させるうどんこ病や、貯蔵中の腐敗果の原因となるつる枯病が問題となっている。これらの病害対策は適期を逃すと効果が低くなるうえ、蔓延しやすい年には複数回の防除が必要となる。しかし、農業従事者の高齢化と労働力不足が進む中、防除作業は生産現場の大きな負担となっている。さらに、栽培後期は蔓が畝間を塞ぐため、慣行のブームスプレーヤによる防除方法では作業通路の造成や茎葉・果実の踏みつけが避けられない。さらに、雨が降ると圃場がぬかるみ、防除が困難になり、防除時期の遅れがおこっている。これらの農薬散布の問題を解決し、省力化・軽労化を推進するため、北海道の代表的なカボチャ産地の一つである厚沢部町において、ドローンによるうどんこ病AI画像診断と農薬散布の効果を実証する。
成果の内容・特徴
- うどんこ病AI診断システムは、ドローンで撮影した圃場画像をWAGRI病虫害AI画像診断APIシステムで診断を行い、地図上にその結果を表示する(図1A)。病斑面積6%以上の病斑葉とそれ以外の健全葉を高精度(それぞれ正答率0.89と0.97)で判定できる。2ha圃場を30分弱で診断可能で、目視による診断より約2.5倍の診断個所を処理できる(図1B)。
- ドローンによる防除作業は、圃場と給水施設が隣接している1圃場を防除作業する場合、慣行のブームスプレーヤより9%程度作業時間を短縮できる(図2A)。圃場同士および給水施設が離れた複数圃場に防除作業する場合では、作業時間は26%短縮される(図2B)。大規模栽培地域において給水施設や圃場が分散している条件では、ドローンによる作業時間短縮のメリットは大きくなる。
- 2023年7~8月の2か月での降雨、風、土壌条件による散布可否を調査した結果、ドローン区で慣行より散布可能日は27%多く、降水量の多い7月では40%も多い(表1)。降水量が多く、土壌がぬかるむ条件でもドローンによる防除では適期散布の可能性が高まる。
- 無防除区での果実の廃棄量は、つる枯病による果実の廃棄量が多く、主につる枯病が廃棄の原因である(表2)。慣行よりドローン防除のつる枯病に対する薬剤の防除価はやや低かったものの、無防除と比較して十分に防除効果がある。
成果の活用面・留意点
- 散布薬剤はベジセーバー(三井化学クロップ&ライフソリューション)を施用。
- 試験において、うどんこ病AI診断のドローン撮影ではDJI phantom4 RTKを用いている。防除では農薬散布用ドローンはNTT e-Drone AC101、ブームスプレーヤはトラクタ(クボタM6950DT)に接続した丸山製作所BDM1110Lを用いている。
- 本試験は、北海道檜山郡厚沢部町で行われ、品種「九重栗イレブン」を用いている。他の場所・品種では確認が必要である。
- 距離が離れている複数の圃場でドローンを利用するほど、その導入効果が高くなることから、カボチャの大規模栽培地域において、さらなるドローン防除の活用を促進できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(スマート農業実証プロジェクト(スマート農業産地形成実証))
- 研究期間 : 2022~2023年度
- 研究担当者 : 中村卓司、鮫島啓彰、川上顕、岩崎亘典、井上康宏、細山隆夫、奥野林太郎
- 発表論文等 : 中村ら(2025)農研機構報告、22:1-9