回転搬送機構により土塊の除去ができる拾上機と運搬車によるサトイモ拾上・収容体系

要約

歩行型タマネギピッカーをベースに改造した回転搬送機構を有する拾上機と運搬車によるサトイモの拾上・収容体系である。畝上のサトイモを拾い上げた後、土塊が除去されたサトイモが運搬車上のフレキシブルコンテナバッグへ収容され、手作業に比べ作業能率が約3倍に向上する。

  • キーワード:サトイモ、拾上作業、回転搬送、土塊除去
  • 担当:農業機械研究部門・無人化農作業研究領域・革新的作業機構開発グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

サトイモの収穫作業工程には、茎葉の処理、マルチ剥ぎ、掘り取り、親イモからの子イモや孫イモの分離、分離したイモのコンテナ等への収容及び搬出などがある。これまでに畝中の株を掘り上げ、畝上に子イモ等を分離する収穫機が開発されているが、畝上のサトイモは手作業で土塊を除去しながら拾い集める必要があるため、その省力化が課題となっており、特に大規模生産者から拾上作業の省力化が望まれている。また、加工用サトイモでは、フレキシブルコンテナバッグを利用した出荷による省力化も求められている。
このため、市販の歩行型タマネギピッカーをベースに、これを改造することでサトイモ拾上機を開発するとともに、主に加工用サトイモを対象に、拾上機と市販の運搬車を組み合わせた拾上・収容体系を構築し、作業能率の向上効果について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本開発機は、市販の歩行型タマネギピッカーをベースに、拾上部、コンベヤ搬送部、回転土塊除去部で構成される(図1)。拾上部はデバイダ(左側のみデイスク刃を追加)、かき込みパドル、一部改造したバーコンベヤ、コンベヤ搬送部は平ベルトコンベヤ、回転土塊除去部は円筒状の篩とスクリュー羽根で構成され、拾上部で拾った土付きのサトイモは、回転土塊除去部を通過中に土塊が除去される。
  • 本開発機の運転者1 人、サトイモの分離作業を行う補助者1 人、クローラ式運搬車の運転者1 人の拾上・収容体系(以下、機械体系)を構築することにより、本開発機で拾い上げたサトイモは、運搬車に積載したフレキシブルコンテナバッグ(容量500L)に収容できる(図2)。
  • 本機械体系により、作業速度0.05m/sのときに拾上成功率は95.2%で、土塊混入率が7.2%、損傷率が3.1%である(表1)。なお、親株からの子イモ等の分離後、プラスチックコンテナへ収容する慣行の手作業では、拾上成功率は98.0%で、土塊混入率が8.7%、損傷率が0.9%である(表1)。
  • 収穫物の積み下ろしとほ場内運搬を含めた機械体系の作業能率は19.5 人・h/10a で、手作業の約3 倍である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 土塊を除去する回転土塊除去部とフレキシブルコンテナバッグを用いたサトイモ拾上・収容体系は、慣行の手作業と比べて大幅な省力化を実現する機械開発の基礎となる。
  • 本機械体系の場合、枕地は6m程度必要である。また、サトイモを収容したフレキシブルコンテナバッグの運搬にはフォークリフト又はローダを準備する必要がある。

具体的データ

図1 開発機の外観,図2 開発機と運搬車による機械収穫体系,表1 作業精度試験結果,表2 作業能率試験結果

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:鈴木渉、大森弘美、臼井善彦、金光幹雄
  • 発表論文等:
    • 鈴木ら(2021)農作業研究、56(3):179~187
    • 鈴木ら、特願(2021年3月17日)