高速かつ高能率で畝立て播種を実現する大豆用播種機

要約

ディスク式畝立て機構と高速で種子繰出が可能な播種機を組み合わせた4条仕様の畝立て播種機である。開発機は従来のロータリ式畝立て播種機と比較して、2倍以上の高速、高能率作業が可能であり、従来機と同等の播種精度、出芽率、収量が得られる。

  • キーワード : 大豆、湿害対策、畝立て播種、高速作業、高能率
  • 担当 : 農業機械研究部門・無人化農作業研究領域・革新的作業機構開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

大豆は湿害が発生しやすい作物であるにかかわらず、都府県では播種時期が5月下旬~7月上旬と降水量が多い時期であるため、畝立て栽培等の湿害対策が必要である。従来のロータリ式畝立て播種機は耕うん、畝立て、播種を1工程で行うため、作業速度が2.5km/h程度と遅い。そのため、規模拡大が進展する生産現場から畝立て播種作業の高速化、高能率化が求められている。
そこで、耕うんと畝立て播種を分けて作業することを前提に、畝立て播種作業の従来機比2倍以上の高速化により、播種適期内の作業面積を拡大する大豆用高速畝立て播種機の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 開発機の対象作物は大豆である。想定する普及対象は、機関出力65~100PS(47.8~73.5kW)のトラクタを有する作付面積20ha以上の大規模経営生産者、作業受託組織等である。
  • 開発機は4条仕様の畝立て播種機であり、ディスク式畝立て機構、播種ユニットから構成される(図1、表1)。ディスク式畝立て機構は1条あたり前後2対の畝立てディスクを具備し、湿潤な土壌でも土の練り付けが少なく、高速で畝立てが可能である。播種ユニットはダブルプレート式種子繰出機構を搭載し、高速作業でも高い播種精度を保つ。また、土壌と接する部分が回転する作溝ディスク、鎮圧輪のみで構成されるため、土壌やほ場の残渣が付着しにくい。
  • 開発機は作業速度4~6km/hで高さ12~15cmの畝を形成し、畝の頂部から深さ3~7cmに、設定した株間で単粒または複粒で播種する。なお、播種前にほ場の耕うんを行っておく必要がある。
  • 開発機は約6km/h(従来機の2倍以上)の速度で畝立て播種した場合でも、従来機と同等の播種精度、出芽率、収量が得られる(表2)。
  • 開発機の作業能率は、ほ場作業量70~120a/h(設定速度:5~6km/h)であり、従来機で最も大きな3条仕様(設定速度:2~2.5km/h、事前耕うんあり)と比較して、2~3倍以上の高能率作業が可能である(図2)。なお、35a以上のほ場では、ほ場作業量100a/h以上を確保できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 大豆の大規模経営生産者、作業受託組織等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 都府県、3,200ha(導入可能面積108,400ha[都府県大豆作付面積]×3%[導入率])、100台(当初5年間)
  • その他 : 積雪などで事前に耕うんすることが難しい地域では従来機が適する場合がある。事前耕うんで砕土率(2cm未満の土塊が占める質量割合)70%以上とすることが望ましい。2024年4月にアグリテクノサーチ株式会社から「大豆用高速畝立播種機HRP-4」として市販開始。
    小型の2条仕様は、畝立て機構が小橋工業株式会社から「高速畝立てディスク HDR200」、播種ユニットがアグリテクノサーチ株式会社から「大豆用高速播種機HUD-2」として2023年8月から分担販売中。これら2機種を連結することで大豆用高速畝立て播種機2条仕様となる。

具体的データ

図1 開発機,表1 開発機の主要諸元,表2 播種・栽培試験結果(2020年、宮城県石巻市生産者ほ場),図2 作業能率(ほ場作業量)

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2014~2021年度
  • 研究担当者 : 重松健太、大野智史、藤岡修、山田祐一、山下貴史、関正裕、加藤仁、山本亮、高山定之(アグリテクノサーチ株式会社)、滝澤浩幸(宮城古川農試)、川上耕平(滋賀農技セ)
  • 発表論文等 :