遠隔監視により運転を行う乾燥機の安全性確保のための安全性検査の実施方法及び基準

要約

使用者が遠隔監視装置により監視しながら自動運転を行う乾燥機が満たすべき安全要件と安全性検査の主要な実施方法及び基準である。遠隔監視装置の機能、運転状態異常時や通信障害時の安全機能等の安全性評価に活用できる。

  • キーワード : ロボット農機、乾燥機、遠隔監視装置、安全性検査
  • 担当 : 農業機械研究部門・安全検査部・安全評価グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

近年、乾燥機メーカーにおいてはユーザーからの労働力の省力化の要望に応えるため、使用者が遠隔監視により自動運転を行う乾燥機の開発が進められている状況である。農業機械の遠隔監視といった高度なシステムが農業現場及び社会に受容されるための重要な要素の一つが安全性確保である。そこで、農研機構農業機械研究部門では、遠隔監視により運転を行う乾燥機の安全性確保のための安全機能の定量的な評価試験方法を作成し、安全性検査のロボット農機検査として実施することにより、安全なロボット農機の開発・普及に貢献する。

成果の内容・特徴

  • 本検査の適用範囲は、使用者が遠隔監視装置により監視しながら、遠隔で自動運転させる穀物用の乾燥機(容量10tを超える火力式循環型)である。また、対象となる遠隔監視装置は、乾燥機と同じ施設内に設置されている施設内遠隔監視装置及び乾燥機が設置されている施設外において使用者が利用する施設外遠隔監視装置である(図1)。
  • 本検査の検査項目は、①構造調査、②遠隔監視装置による遠隔操作確認試験、③遠隔監視装置による運転状態表示確認試験、④運転状態異常時の安全機能確認試験、⑤通信障害時の安全機能確認試験から構成される。各検査項目の具体的な内容は、①遠隔監視及び遠隔操作に必要な装備等の確認、②遠隔監視装置により使用者が操作可能な機能の確認、③遠隔監視装置により使用者が乾燥機の運転状態を認識できるかどうかの確認、④乾燥機に異常が発生した場合の安全機能等の確認、⑤遠隔監視装置の通信に障害が発生した場合の安全機能等の確認であり、検査項目毎に検査の実施方法及び基準を定めている(表1、表2)。
  • 遠隔監視装置による遠隔操作確認試験では、遠隔監視装置からは常時非常停止操作が可能であり、停止状態から稼働状態への操作は、乾燥機又は施設内遠隔監視装置からのみ可能とすること、また、遠隔監視装置による運転状態表示確認試験では、適切に状態表示がなされ、使用者が乾燥機の状況を容易に認識できることを求めている(表2)。
  • 運転状態異常時や通信障害時の安全機能確認試験では、異常時及び通信障害時は遠隔監視装置から視覚的かつ聴覚的な警告が発せられ、乾燥機は安全に自動停止すること、また、自動停止後の乾燥機の再起動は、乾燥機又は施設内遠隔監視装置からのみ可能とすることを求めている(表2)。
  • 上記①~⑤の検査項目に加え、検査項目⑥集中遠隔監視装置に関する試験を選択試験として設けている。施設内監視装置及び施設外遠隔監視装置以外に設置された施設であって、施設外遠隔監視装置と同等の機能を有する集中遠隔監視装置に関する検査項目・基準を定めている。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 農業機械メーカー
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国
  • その他 :乾燥機の遠隔監視装置の安全要件は、農業機械研究部門が2018年度より実施している安全性検査のうちロボット・自動化農機検査の主要な実施方法及び基準に導入された。ロボット農機検査の対象機種としては、農用トラクター(乗用型)、田植機に次いで3機種目である。

具体的データ

図1 遠隔監視装置による監視のイメージ,表1 検査項目と実施方法,表2 検査基準

その他