要約
乳牛の2次元画像から、腰角形状を数値化することにより、乳牛の栄養管理上重要な指標であるボディコンディションスコア(BCS)を推定する手法である。これまで目視・触診で判定していたBCSを、知識・経験の有無に関わらず、誰でも専門家同等の判定が可能となる。
- キーワード : 乳牛、BCS、皮下脂肪、腰角、2次元画像
- 担当 : 農業機械研究部門・無人化農作業研究領域・革新的作業機構開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
ボディコンディションスコア(BCS)は乳牛の皮下脂肪の蓄積程度を、腰角、座骨、大腿骨の付け根を結ぶライン形状、腰角、座骨、尾骨靭帯、仙骨靭帯の各部を目視・触診にて1.00(削瘦)~5.00(過肥)の0.25刻みでスコア化したもので、栄養状態の適否を判断するための指標として知られている。BCSは栄養、繁殖、疾病と密接な関係があるため、定期的に判定することが推奨されているが、目視と触診による判定には、豊富な知識と経験を必要とするため、経験の浅い者であっても専門家と同等の判定をする技術開発が望まれている。そこで、本研究では2次元画像を用いて、乳牛「ホルスタイン種」の皮下脂肪の蓄積程度を数値化することで、経験が浅い者であっても簡易かつ高精度にBCSを推定可能な推定手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 推定手法は、乳牛を後方から撮影した2次元画像の腰角(骨盤の先端が角ばって飛び出た部分)を使用する(図1)。腰角の形状はBCSが低いほど、腰角上部側および腰角側部側の脂肪が減少し、骨に皮が張ったような尖った形状となり、BCSが高いほど、腰角上部側(腰角、尾骨間)および腰角側部側に脂肪が蓄積することで丸みを帯びてくる傾向がある。この特徴を活かし、腰角上部側および腰角側部側でそれぞれ補助線を構成し、それら2本の補助線が成す角度(以下、指標値)によって腰角形状を数値化(図2)する。BCSが高い牛ほど指標値は大きく、BCSが低い牛ほど指標値は小さくなるため、知識・経験の有無や乳牛の大きさにかかわらず牛の皮下脂肪の蓄積程度を数値化できる。
- 算出した指標値と2機関でそれぞれの専門家が判定したBCS(以下、専門家BCS)には高い相関があり(図3)、得られた各機関の回帰式からBCSを推定する。推定したBCSと専門家BCSとの誤差は、人が判定する際に生じると言われている判定誤差±0.25を下回り、専門家と同等の判定精度を有する。
成果の活用面・留意点
- 本推定手法を利用したBCS判定アプリケーション開発に利用できる。
- 定期的に判定したBCSを飼養管理に利用することで、効率的で適切な栄養管理、繁殖成績の向上が期待できる。
- 本推定手法で使用する2次元画像は、乳牛が起立状態で、左右の腰角が尻尾や隣の牛に隠れることなく鮮明に見える必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金(農業機械技術クラスター事業)
- 研究期間 : 2019~2021年度
- 研究担当者 : 西川純、川出哲生、平田晃、志藤博克
- 発表論文等 : 平田ら「牛の評価装置及び牛の評価方法」特開2022-135904(2022年9月15日)