繰り返し作業におけるアシストスーツの腰部疲労軽減効果の評価手法

要約

アシストスーツのアシストトルク(N・m)を三次元生体力学モデルと関節-筋疲労モデルに適用することで、農業での繰り返し作業(持ち上げ)における腰部疲労軽減効果の経時変化を推定する手法である。

  • キーワード : 農作業、人間工学、アシストスーツ、疲労、シミュレーション
  • 担当 : 農業機械研究部門・システム安全工学研究領域・協調安全システムグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

アシストスーツの評価で用いられている動作や筋電図(EMG)、主観評価といった手法(表1)は、いずれも短時間の作業内における身体負担の軽減効果を評価の対象としており、その作業が長時間繰り返された際の疲労軽減効果を評価することはできない。使用者や製造者にとって、製品の選定や導入促進にあっては継続される作業全体でどれほどの軽減効果が見込まれるかが重要となる。
そこで、本研究では、農業での繰り返し作業(重量物の持ち上げ)においてアシストスーツによる腰部疲労の軽減効果の経時変化を推定する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本手法は、農作業アシスト装置による身体負荷軽減効果の評価手法(成果情報2023)により、算出した腰部トルクから、一定時間作業を繰り返した際の最大腰部許容トルクを推定することで疲労を評価できる指標である。
  • 本手法で用いる推定手法は、三次元生体力学モデルの腰部関節トルクの推定方法(成果情報2023)とMa(2009)の筋疲労モデルを腰部に適用して得られる、経過時間t(min)と発揮可能な最大トルク(腰部許容トルク)の当該作業者の最大腰部許容トルク(Chaffin、2006)に対する割合(%最大腰部許容トルク)との関係式から、その時の腰部許容トルクを推定する。
  • 本手法が対象とする作業は、農作業を想定した繰り返し持ち上げ作業(採集コンテナ15kgを約4分間8秒に一回のペースで軽トラ荷台高65cmの台へ持ち上げる)動作である。アシストスーツ装着状態として、関節角度に対するアシストトルクを任意に設定することで、この作業におけるその状態での5分後以降の%最大腰部許容トルクを推定する。
  • 研究対象者の脊柱起立筋の最大随意筋収縮時に対する筋活動量の割合(%MVC)と、開発した評価手法により推定した%最大腰部許容トルクと比較した場合、%MVCと%最大腰部許容トルクの回帰式の傾きの誤差はいずれの場合においても10ポイント以内であり、本手法は実用上十分な精度を有する(図1)。
  • 本手法により市販のアシストスーツ(人工筋肉を備えた外骨格パッシブタイプの腰補助用アシストスーツ)から取得したアシストトルクを入力し、アシストスーツ有/無の条件で%最大腰部許容トルクを対応ありのt検定で比較したところ、アシストスーツを使用した場合の%最大腰部許容トルクは使用しない場合と比べて有意に大きく(p<0.05)、経過時間9分の時点で7.2%の差が生じると推定できる。これによりアシストスーツによる疲労軽減効果の評価に利用できる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 将来的には、開発した評価手法に筋疲労回復モデルを組み合わせることで、より実際の農作業に近い農作業動作での疲労軽減効果を評価できる。
  • 本手法により、生産者にニーズのある長時間作業での疲労軽減効果を製造者は提示できる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2021~2024年度
  • 研究担当者 : 田中正浩、向霄涵、菊池豊、紺屋秀之、西川純、松本将大、小林慶彦
  • 発表論文等 :
    • Tanaka M, Xiang X (2025) JARQ. 59(2): 101-118
    • Xiang X et al. (2024) Front. Bioeng. Biotechnol. 12: 1418775
      doi:10.3389 /fbioe.2024.1418775