要約
接合資材に低コストな熱可塑性ポリウレタン製樹脂テープを用いるトマト用の接ぎ木装置である。切れ残りを防止する苗の切断方法及び張力安定性を向上させたテープ供給機構等により、苗の茎径の違いへの許容範囲が広く安定した接ぎ木が可能で、熟練作業者並の活着率を得ることができる。
- キーワード : 接ぎ木、トマト、接合資材、樹脂テープ、溶着
- 担当 : 農業機械研究部門・知能化農機研究領域・施設園芸生産システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
土壌病害や樹勢強化対策として、国内外を問わず接ぎ木苗の利用が拡大し、苗生産企業が生産する接ぎ木苗の需要が増加している。一方で、苗生産企業等の接ぎ木苗の生産現場では、接ぎ木の熟練作業者が不足し、作業の機械化・自動化が求められている。また、慣行の接ぎ木作業の機械化体系では接合資材のコストが高く、より低コストな資材への変更が必要とされている。このような背景を受け、弾性が高く溶着が可能な特性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂テープ(以下、樹脂テープ)を超音波で溶着する接合方法を開発、装置化し、苗生産企業での実証に取り組んだが、実用化にはより高い活着率の実現や装置の取扱性向上が必要とされた。そこで、本研究では、従来機よりも活着率と取扱性を向上させ、苗生産現場への適応性を高めた樹脂テープ式トマト用接ぎ木装置を開発する。
成果の内容・特徴
- 開発機は、接合資材として樹脂テープを用いるトマト用の半自動型接ぎ木装置で、穂木・台木苗の供給部、穂木・台木苗を同位置で同時に斜めに切断する苗切断部、樹脂テープに一定の張力を与えて供給するテープ供給部、樹脂テープを溶着して接合箇所を固定する接合部及び接ぎ木苗を装置から取り出し機外へ搬出する取り出し搬出部から構成される(図1、表1)。苗の切断、接合及び装置からの搬出は自動で行われ、穂木・台木苗の装置への供給、接ぎ木苗の接合状態の確認及びセルトレイへの充填に作業者2名を要するが、後者を前者と兼ねた1名作業も可能である。
- 活着率を向上させるため、苗切断部では従来機の直進動作のみだった切断刃の動作に、横に引く動作を加えて「引き切り」を行うことにより穂木・台木苗の切れ残りを防止するとともに、テープ供給部では、樹脂テープに張力を与える機構を改良し安定性を高めている。また、取扱性向上のため、筐体の剛性を高めることで設置時等の機械調整作業を簡易化するとともに、取り出し機構の改良により接ぎ木苗の取り出しが円滑にできるようになり、1名作業も容易である。
- 開発機による2週間後の接ぎ木苗の活着率は、標準的な200穴セルトレイ苗を利用した場合で従来機が91.9%に対して、94.4%と苗生産企業が求める水準に達している。また、穂木と台木の接合面がズレやすい128穴セルトレイ苗を台木に用いた場合で97.5%、苗の茎径が細く切断不良が生じやすい406穴セルトレイ苗を用いた場合でも97.6%と高い活着率を得られる。
- 熱可塑性ポリウレタン樹脂は高い伸縮性や柔軟性を有するため、テープ供給部で一定の張力を樹脂テープに与えることで安定した締付け力で苗を接合でき、慣行の手作業用チューブで必要とされる茎径に応じたサイズ選択は不要である。また、接ぎ木苗の生育とともにテープの溶着は徐々に剥がれ、慣行のチューブのように最終的には自然に脱落する。テープ(日清紡テキスタイル製、モビロンテープ)は汎用品で、接木苗1本当たりの価格は慣行のチューブの約1/3~1/2と安価である。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 接ぎ木苗生産企業。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 国内の苗生産企業・100台。
- その他 : 2026年度に共同研究企業より実用化の予定である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、民間資金等(資金提供型共同研究、寄付金)
- 研究期間 : 2023~2025年度
- 研究担当者 : 中山夏希、市里浩章(岩谷マテリアル株式会社)、千代田尚人(岩谷マテリアル株式会社)、久野知文(岩谷マテリアル株式会社)、加納一広(京和グリーン株式会社)、山本長武(京和グリーン株式会社)、森雄一(京和グリーン株式会社)、北山康平(京和グリーン株式会社)
- 発表論文等 :
- 中山ら、特願(2026年2月20日)
- 中山ら、PCT出願(2026年2月24日)