高水分の水稲収穫に適応可能な車速制御付きコンバイン

要約

収穫作業中の穀粒水分に応じて作業速度を自動制御することで、脱穀選別損失を抑制しながら高水分水稲を収穫できるコンバインである。降雨後や朝露・夜露が付着する条件下の収穫が可能になることで、1日当たりの作業面積を約3割拡大できる。

  • キーワード : 収量コンバイン、高水分水稲、車速制御、脱穀選別損失、作業面積
  • 担当 : 農業機械研究部門・無人化農作業研究領域・革新的作業機構開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

コンバインの収穫作業時間は、水稲に朝露・夜露が付着していない時間帯に制限される。担い手の生産規模の急拡大に伴いコンバイン1台当たりの作業負担面積は増加傾向にあるが、台数の増強で対応するとコストが増大し、規模拡大のメリットを十分に享受できない。また、近年の気候変動下で適期収穫を実現するには、少量の降雨下や降雨直前・直後の高水分水稲を収穫せざるを得ない場合があり、コンバインの脱穀選別損失の著しい増加や作業効率の低下が問題となっている。
そこで、コンバインの脱穀選別損失の急増抑制及び1日当たりの作業面積の拡大を図るため、降雨後や朝露・夜露が付着した穀粒水分25%以上の高水分水稲に対して、高い適応性を備えたコンバインを開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発機は、水分測定部と質量測定部を装備する6条刈収量コンバイン(I社製HJ6130)をベース機として、穀粒水分のリアルタイム計測及び穀粒口流量に基づいた車速制御の機能を備えている(図1)。
  • 車速制御の機能は、穀粒水分が25%以上の高水分水稲の収穫中において脱穀選別損失が3%以上の収穫作業NG領域に入らないように、穀粒水分に応じて作業速度を自動制御することを特徴としている。収穫作業中の穀粒水分の変動に対しては、基準となる穀粒口流量と平均作業速度の比を基に最高車速を算出し、穀粒水分(電気抵抗式単粒水分計の10粒平均値)が更新される毎に作業速度が自動で調整される。車速制御により収穫可能な穀粒水分域は25~32%である。
  • 車速制御を行うためには、まず、初期設定としてほ場最外周の収穫を行い、グレンタンクが一定以上の質量(タンク内質量目安400kg)となるまでの間に、基準となる穀粒口流量と平均作業速度の比を記録する。この時、グレンタンクからの排出の有無によらず、収量データ(グレンタンク内穀粒質量、穀粒水分)も記録する。その後、車速制御が開始され、通常のコンバインと同様に収穫作業を行う。その際、作業者が作業速度を操作するHSTレバーを制御目標の作業位置以上に倒しても作業速度は自動的に所定の車速に制御される。
  • 開発機を用いて降雨後や朝露・夜露が付着した穀粒水分が25%以上の高水分水稲を収穫した場合、車速制御ありの場合では、車速制御なしの場合と比較して、脱穀選別損失を65.6%低減可能である(表1)。また、車速制御を利用した場合に、1日当たりの作業時間が朝夕3時間ずつ拡大することを想定すると、1日当たりの作業面積を30.3%拡大できる(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 水稲生産者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国・40台/年。
  • その他 : 本技術に対応したコンバインは2026年度に井関農機が実用化予定。降雨条件下等の穀粒水分が32%を超えるような過度に高い条件下では、収穫作業を行わないよう留意する。車速制御については、ほ場毎で初期設定を行う必要がある。

具体的データ

表3 開発機の性能,表1 性能試験結果,図2 開発機による1日当たりの作業面積の試算結果

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2023~2025年度
  • 研究担当者 : 栗原英治、小林太一(宮崎大)、長嶺達也(岩手県農研セ)、田上和成(井関農機)
  • 発表論文等 : 栗原、小林「コンバイン及びコンバインの制御方法」特開2024-60694(2024年5月7日)