要約
イチゴ高設栽培を行う温室で、ドローンのダウンウォッシュを活用するため、気流速の影響範囲や飛行速度の影響を定量的に示し、安全・安定して飛行させる条件や留意点を取りまとめた資料である。ドローンによる生育計測や送風受粉など栽培管理の省力化研究実現に必要な知見が得られる。
- キーワード : ドローン、温室、イチゴ、作物計測、送風受粉
- 担当 : 農業機械研究部門・知能化農機研究領域・施設園芸生産システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
イチゴ栽培は労働時間も長く、作業管理の効率化・省力化が強く求められる。特に促成栽培では休眠管理をはじめ、作物の生育状態を詳細に把握することが重要となる。また受粉はミツバチなどの花粉媒介昆虫に依存しており、天候の影響を受けやすく近年のミツバチ不足からも代替手段が求められる。こうした課題解決の一手法として、近年農業現場ではドローン技術の活用が進められている。ドローンは広域の作物情報が容易に取得できるほか、飛行時のダウンウォッシュを利用することで群落内の計測や送風受粉への応用も期待される。一方で、温室内はGNSSの電波受信が不安定で、作物や資材による障害も多く、長期に安定してドローンを飛行させることは容易ではない。
そこで本研究では、温室内でドローンを安全かつ安定して飛行させるための運用指針を整理するとともに、栽培管理支援で利用するダウンウォッシュの風量を調整するための因子を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 温室内でドローンを安全に飛行させるための留意点、安全飛行を阻害する要因、飛行の事例報告等がまとめられた資料である(図1)。温室内にて実施された約1600フライトのドローン飛行実験に基づき、ドローンの飛行が乱れる要因(晴天時のビニール等の反射、透過性の高い物体、カーテンワイヤ等、視覚センサが誤認識しやすいもの)や、飛行挙動の事例などを知ることができる。
- SLAMによる自律飛行機能を備えたマルチロータタイプのドローン(Skydio 2+、Skydio社)および自動離着陸ポート(DockLite、Skydio社)を用いて4か月間の実証を行った結果、上記資料に基づいて運用することで、イチゴ栽培温室内でのドローンの定期巡回飛行を安定して行える(図2)。
- ドローン飛行時のダウンウォッシュ量は、ドローンのロータ(プロペラ)内側直下で特に気流が強いが、ドローンと対象物の距離離れると気流速は減少(直下の場合、500mm-->2,000mmで半減)する(図3)。また飛行速度を高めると、同じ飛行高度でも速度に応じて気流速は減少する。
- 本成果を活用して温室内でドローンを飛行させることで、イチゴ生長点近傍の省力観測(2022年度研究成果情報)が効率的に行え、イチゴの送風受粉(2025年度研究成果情報)も実現できる。
成果の活用面・留意点
- 図1の資料は国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究(課題23301)の成果資料であり、プロジェクト実施担当者(=本研究担当者)に問い合わせ所定の手続きで入手できる。
- 本成果を用いることでイチゴの詳細な時系列情報が取得できるため、病虫害予測や生育診断、収量予測などへの活用が期待できる。
- 温室内でのドローン飛行は国土交通省への申請が不要(2025年12月現在)だが、安全管理のためドローン飛行に関する知識・経験を有する者が実施する必要がある。また、本資料では安全飛行の要件や飛行阻害要因を示したが、想定される全ての状況で安全な飛行を保証するものではない。運用にあたっては、機体の状態や周囲の状況を確認し、メーカの指示に従った飛行が必要である。
- ドローン飛行を活用した観測手法や送風受粉の詳細については、それぞれの研究成果情報に記載された内容に準じる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、総務省(高度通信・放送研究開発委託研究)
- 研究期間 : 2023~2025年度
- 研究担当者 : 深津時広、坪田将吾、吉永慶太、関隼人、坂田遼太、西川純
- 発表論文等 :
- 坪田ら(2022)農業食料工学会誌、84:321-331
- 深津(2025)アグリバイオ、9:1152-1156
- 坪田ら、「作物モニタリング装置及び作物モニタリング方法」特許7498955号(2024年6月5日)