振動ローラを用いた水稲乾田直播の作業性向上のための幅広ローラ

要約

振動ローラを用いて水稲播種後に漏水を防止する乾田直播技術において、作業能率の向上が求められている。ローラ幅を従来の120cmから180cmにし、走行速度を3.5km/hにすることで作業能率は20分/10a以下となり、播種機と並行作業が可能になる。

  • キーワード:水稲乾田直播、振動ローラ、漏水抑制、大区画、規模拡大
  • 担当:九沖研・暖地水田輪作研究領域・スマート水田輪作グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

乾田直播は、水稲の移植栽培と比べて苗づくり・代かき・苗箱運搬等がなく省力・軽労化を図れる。農家人口の急減に伴い、安定した技術としての必要性が急激に増している。振動ローラを用いる乾田直播(図1)は、水稲作の準備期間が限られる二毛作地域において、これを実現する技術である。代かきに代わる漏水防止工程である鎮圧工程は、播種作業との組み作業を推奨しているが、従来市販機を用いると、鎮圧工程の遅れが目立っている。また、本技術の普及が進み、一経営体あたりの乾田直播実施面積が拡大したことからも、鎮圧工程の時間短縮への要望が高まっている。
そこで、経営規模20ha程度まで(九州の経営耕地面積の約8割を占める:2020年農林業センサス)の生産者を対象に、走行速度を上げることで鎮圧工程の高速化が可能な幅の広い振動ローラを開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した振動ローラは、ローラ部、起振部、フレーム部からなり、幅180cm、重さ約510kgである(図2)。50PS以上のトラクタに装着する。
  • 50PS以上のトラクタは、ホイール(クローラ含む)幅(内側)が180cm以下であることから(国内メーカ各社カタログ値より)、開発機は、タイヤとローラの間に隙間を作らず鎮圧できる。
  • 本機による作業能率は、20分/10a以下である(表1)。また、2ha圃場では13分/10aと大区画ほ場で高い。いずれも冬作時に弾丸暗渠を施工したほ場であるが、水稲湛水時の減水深は適正な範囲である。従来市販機(川辺農研産業(株)SV2-T、幅120cm、重さ280kg、適用トラクタ20~30PS)による作業能率が29分/10aであるのに対し30%以上高速化し、播種機との並行作業が可能である。一日の作業時間を6時間とすると、10haは、従来機では約8日、本開発機では4日弱(大区画ほ場)~5日(50a程度のほ場)で終了する。
  • 本開発機は、2021年度に受注生産を開始する。

普及のための参考情報

  • 普及対象:50PSクラス以上のトラクタを保有する水稲生産者。水稲面積50%として経営規模20ha程度まで。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:関東以西の水稲作地帯。振動ローラを用いる乾田直播として800ha。
  • その他:実証試験は、河川下流域の灰色低地土で行った。振動ローラは、PTO回転域1000~1200rpmを推奨する。メーカ指定のPTO回転域(750~1400rpm)外の作業は故障につながるので避ける。また、ローラを持ち上げるときはPTOを切る。

具体的データ

図1 二毛作地域における乾田直播の作業工程(漏水防止工程に振動ローラを用いる),図2 新規開発した振動ローラ,表1 生産者圃場における実証試験(福岡県みやま市内、灰色低地土ほ場)

その他