穂発芽性が改良された製パン性に優れるパン用小麦新品種「はる風ふわり」

要約

「はる風ふわり」は「ミナミノカオリ」より穂発芽性が改良されたパン用小麦である。収量は「ミナミノカオリ」よりやや少ないが、タンパク質含量が多い。アミロース含量はやや少なく、小麦粉の生地物性が強く、製パン性に優れる。

  • キーワード:コムギ、製パン性、タンパク質含量、穂発芽性
  • 担当:九沖研・暖地水田輪作研究領域・作物育種グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

西日本地域で広く栽培されているパン用小麦品種「ミナミノカオリ」は、成熟期がやや遅く、穂発芽性が"やや易"であるため、しばしば穂発芽被害による品質低下が問題となっている。また、実需者からは「ミナミノカオリ」と同等以上にタンパク質含量が多く、製パン性の優れた品種が求められている。そこで、穂発芽性を改良し、原粒タンパク質含量が多く、製パン性に優れるパン用小麦品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • コムギ「はる風ふわり」は、穂発芽性が"難"で栽培性が優れる日本めん用系統「西海188号」を母、製パン性に優れるパン用系統「北見春66号」を父とする人工交配の後代から育成された品種である。
  • 育成地では、「ミナミノカオリ」と比べて、出穂期は2日、成熟期は3~4日早い。稈長は同程度で、穂数は多く、耐倒伏性はやや劣る(表1)。
  • 「ミナミノカオリ」と比べて、収量はやや少なく、容積重は同程度で、千粒重はやや小さい。外観品質は同程度である(表1)。
  • 穂発芽性は"中"で「ミナミノカオリ」より優れる。縞萎縮I型抵抗性は"やや弱"、うどんこ病抵抗性と赤さび病抵抗性は"強"、赤かび病抵抗性は"やや弱~中"である(表2)。
  • 「ミナミノカオリ」と比べて、原粒のタンパク質含量はやや多く、灰分含量はやや少ない。60%粉のアミロース含量はやや少ない(表3)。
  • 「ミナミノカオリ」と比べて、60%粉のファリノグラムの吸水率が高く、生地物性の強さを表すバロリメータバリューや形状係数が大きく、生地物性が強い(表3)。
  • 実需者による製パン評価では「ミナミノカオリ」と比べて、製パン時の吸水性評価が高く、パンの比容積が大きく、官能評価が高く、総合評価が優れる(表4)。製パン評価はパン用の輸入小麦銘柄である1CWと同程度である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:小麦生産者。
  • 普及予定地域・普及予定面積:栽培適地は温暖地・暖地の平坦地。2021年3月に佐賀県で奨励品種に採用された。2021年産の作付け面積は約400haで、今後さらに増加する見込み。
  • その他:赤かび病にやや弱いので適切に防除を行う。パン用に適したタンパク質含量が得られるよう穂揃期追肥を施用する。佐賀県において本品種の栽培マニュアルがオンラインで公開されている。
    (https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00322235/3_22235_201838_up_jrd0uylx.pdf)

具体的データ

表1 「はる風ふわり」の農業特性および子実特性,表2 「はる風ふわり」の障害・病害耐性,表3 「はる風ふわり」の製粉性および60%粉の品質,表4 「はる風ふわり」の60%粉の実需者による製パン性評価

その他

  • 予算区分:交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
  • 研究期間:2004~2021年度
  • 研究担当者:谷中美貴子、中村和弘、平将人、境哲文、松中仁、杉田知彦、塔野岡卓司、西尾善太、河田尚之、藤田雅也、八田浩一、久保堅司、小田俊介、波多野哲也、中田克
  • 発表論文等:中村ら「はる風ふわり」品種登録第29273号(2022年6月28日)