イチゴの船舶・航空複合一貫輸送(Sea&Air輸送)は低コストで鮮度も保持できる
要約
福岡から沖縄までを海上輸送、沖縄からアジア諸国までを航空輸送とする船舶・航空複合一貫輸送(Sea&Air輸送)により、九州産イチゴを、高い品質を保ったまま低コストかつ迅速に輸出することができる。
- キーワード:輸出、イチゴ、海上冷蔵コンテナ輸送、航空輸送、Sea&Air輸送
- 担当:九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・施設野菜グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
イチゴの輸出は果実の損傷を防ぐため、航空輸送によって行われている。低コスト化を目的に冷蔵コンテナを用いた海上輸送の導入が提案されているが、九州では輸出用の荷量が少ない、大規模コンテナターミナルを有さないため航路が整備されておらず、必要以上の日数が掛かるなどの課題がある。そこで、航路が整備された那覇港までを海上輸送、その後を航空輸送とした時の輸送方法が果実品質・輸送コストに及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- Sea&Air輸送では、博多港から那覇港までを冷蔵コンテナを用いた海上輸送、那覇空港からアジア諸国の空港までを冷蔵条件下での航空輸送とする。総輸送日数は約6日間である(表1)。
- 航空便を利用する際には、保冷剤等を用いて7°C以下の冷蔵条件を維持する。経由地においてただちに積み替えができない場合、6°C以下の冷蔵条件を維持したまま2日間程度の一時保管が可能である。冷蔵条件を維持することで、経由地での積み替え時の振動、衝撃発生に伴う損傷発生を抑制することができる(図1)。
- Sea&Air輸送で輸送したイチゴは、海上輸送したイチゴに比べ輸送日数が短いため、着荷後の品質低下が少なく、棚もち性に優れる(図2)。
- Sea&Air輸送は、荷量6~15 m3の輸送時に航空輸送に対してコストが61%程度の約333円/kgとなり、優位性がある(表2)。
成果の活用面・留意点
- 那覇港から那覇空港までの輸送および積み替えは、冷蔵トラック等を利用して行う。
- イチゴの品質を保持するため、包装資材として、宙吊り型容器を用いる。
具体的データ

その他
- 予算区分:農林水産省(地域戦略プロジェクト)
- 研究期間:2016~2019年度
- 研究担当者:遠藤(飛川)みのり、曽根一純、大石高也(大石産業)、小林俊裕(日本通運)、松下孝一(日本通運)、文美玲(日本通運)、佐藤優介(日本通運)、田中慎司(ナックス)
- 発表論文等:
- 遠藤(飛川)ら(2020)植環工、32:122-131
- 遠藤(飛川)(2020)農流技研会報、324:14-17