葉焼病に強い納豆向け大豆品種「すずおとめ2号」の育成

要約

納豆向け大豆品種「すずおとめ2号」は、「すずおとめ」に葉焼病抵抗性を導入して育成した品種である。主要な特性は「すずおとめ」と同等で、葉焼病に抵抗性であるため収量は約2割多く、百粒重は約1~2g大きい。納豆加工適性は「すずおとめ」と同等に優れる。

  • キーワード:大豆、小粒、納豆、葉焼病抵抗性、早生、暖地・温暖地
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・暖地水田輪作研究領域・作物育種グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

「すずおとめ」は納豆向け小粒品種で、難裂莢性を有することから機械収穫に適しており、福岡県、熊本県、大分県、鹿児島県、三重県で栽培されている。一方で、九州地域では豆腐向け品種「フクユタカ」が大豆栽培の大半を占めており、作業が短期間に集中することが課題になっている。「すずおとめ」は「フクユタカ」よりも2週間程度早生であり、「フクユタカ」よりも後に播種をしても、先にコンバイン収穫が可能で作業分散できるため、適期作業に貢献する品種として評価されている。しかしながら、「すずおとめ」は葉焼病に特に弱い品種であり、恒常的に葉焼病の被害が発生する九州地域では、早期落葉による収量の低下、小粒化が問題になっている。
そこで「すずおとめ」に、葉焼病抵抗性をDNAマーカーを用いた連続戻し交配により導入し、葉焼病に強い納豆向け品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「すずおとめ2号」は、「すずかれん」に由来する葉焼病抵抗性を「すずおとめ」に導入するため、葉焼病抵抗性のDNAマーカーで選抜しながら4回連続戻し交配して育成した品種である(図1)。
  • 成熟期などの生育・品質特性は「すずおとめ」とほぼ同じで、葉焼病の発生が少ないため「すずおとめ」よりも2割程度多収であり、百粒重は約1~2g程度大きい(表1、図1、図2)。
  • 「フクユタカ」よりも約2週間早生で「すずおとめ」と同等の熟期であり、作業分散が可能である(表1)。
  • 小粒で外観品質に優れ、納豆加工適性は「すずおとめ」と同等である(表2、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 「すずおとめ」よりもやや倒伏に弱いため、早播や密植は避ける。
  • 「すずおとめ」と同様にダイズシストセンチュウ抵抗性が"弱"であるため連作を避け、適切な輪作体系で栽培する。
  • 難裂莢性を有するが、品質の低下を防ぐため適期に収穫を行う。
  • ベンタゾン液剤により減収の報告があるため、高温時を避けて散布する等、注意して使用する。
  • 2021年に福岡県で20ha栽培され、2022年より熊本県でも栽培開始予定である。

具体的データ

表1 「すずおとめ2号」の主な特性,表2 納豆加工適性試験,図1 圃場における葉焼病発生程度,図2 「すずおとめ2号」の子実の外観

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013~2020年度
  • 研究担当者:大木信彦、高橋将一、河野雄飛、高橋幹
  • 発表論文等:大木ら「すずおとめ2号」品種登録出願公表第35326号(2021年6月29日)