かんしょ品種「べにはるか」「ふくむらさき」のDNA品種識別技術

要約

DNAクロマト法を応用した識別キットにより、かんしょ品種「べにはるか」「ふくむらさき」を国内の主要な流通品種を含む47品種と識別できる。本技術は農林水産省のガイドラインに沿って妥当性を確認しており、農研機構のホームページから技術マニュアルを公開している。

  • キーワード : かんしょ、DNA、品種識別、べにはるか、ふくむらさき
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

近年、かんしょ種苗の海外流出や国内における不正な流通が問題となっている。種苗の適切な流通を確保し、育成者権を保護するためには、対象品種を簡便かつ精度よく見分けられるDNA品種識別技術の確立が求められる。本研究では食用かんしょの主要流通品種である「べにはるか」に加えて、今後輸出等の増加が見込まれる「ふくむらさき」について、DNA情報を利用した簡便な品種識別手法の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 識別にはかんしょの生の塊根または未展開葉から株式会社ニッポンジーンのISO SPIN Plant DNAで抽出したDNAを用いる。抽出したDNA1~10ngを用い、新たに開発した識別キット(株式会社ファスマック、商品名GenCheck® べにはるか&ふくむらさき)を使用して「べにはるか」「ふくむらさき」の識別を行う(図1、図2)。
  • 識別キットでは、3つの識別用マーカーと全ての品種で増幅される増幅確認用マーカーをPCRで増幅した後、DNAクロマト紙で検出する。3つの識別用マーカーの組み合わせにより、「べにはるか」「ふくむらさき」を国内の主要流通品種を含む47品種と識別できる(図3、表1)。DNAクロマト法の利用により、電気泳動法を用いた場合に比べて簡便にマーカーの検出を行うことができる。
  • 本識別技術は「DNA品種識別技術の妥当性確認のためのガイドライン」(令和4年度改訂版、農林水産省輸出・国際局知的財産課)に沿って妥当性を確認している。また、農研機構ホームページの「DNA品種識別技術に関する情報」から技術マニュアルを公開している。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 品種識別等検査機関、公立試験研究機関等。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : サーマルサイクラー等の必要な装置を有する検査機関、研究機関等での利用が期待される。
  • その他 : 識別には上記DNA抽出キット、識別キットの他にマイクロピペット、微量遠心分離機、マイクロチューブ用恒温槽、微量分光高度計、サーマルサイクラー(マニュアルに記載のもの)等の機器、および一般的なDNA実験に用いる各種の消耗品が必要である。

具体的データ

図1識別操作の流れ,図2開発した識別キット,図3キットによる識別例,表1識別キットで陰性となることを確認した品種

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究推進事業:品種識別技術の開発)
  • 研究期間 : 2019~2023年度
  • 研究担当者 : 田中勝、ハク エムダドウル、高畠令王奈、門田有希(岡山大学)、柿木茉歩(岡山大学)、磯部祥子(かずさDNA研究所)、高崎一人(株式会社ファスマック)、竹内朋幸(株式会社ファスマック)、峯岸恭孝(株式会社ニッポンジーン)
  • 発表論文等 :